簿記3級の決算とは?会計期間を締めくくる手続きのこと
簿記3級の決算とは、1年間の帳簿の記録を締めくくって、その1年の利益と期末時点の財産の状態を確定させる一連の手続きのことです。日々の取引を仕訳して総勘定元帳に転記していく作業が「期中の処理」だとすれば、決算はその積み重ねを最後に精算して、損益計算書と貸借対照表という2枚の成績表に仕上げる作業にあたります。簿記3級の学習の中でも決算は最終工程であり、同時に試験で最も配点の大きい領域でもあります。
会計期間と決算日 — いつ決算をするのか
会社は活動を1年ごとに区切って利益を計算します。この区切りを会計期間といい、期間の初日を期首、最終日を期末(決算日)と呼びます。日本の会社では4月1日から翌年3月31日までを1会計期間とすることが多く、簿記3級の問題の詳細を読む">簿記3級の問題文でも「会計期間はX1年4月1日からX2年3月31日までの1年間」といった前提が冒頭に置かれるのが定番です。決算はこの決算日を基準に行い、決算日時点の残高が翌期首へ引き継がれていきます。
問題文に書かれた会計期間は、単なる背景説明ではありません。減価償却を何か月分計上するか、前払保険料を何か月分繰り延べるかといった計算は、すべて決算日と会計期間から逆算します。決算の問題を解くときは、まず会計期間に印をつけるところから始めるのが安全です。
なぜ決算という手続きが必要なのか
期中の帳簿は、現金や商品が動いたタイミングで記録されています。ところが、その記録をそのまま集計しても正しい利益は出ません。たとえば1年分の保険料をまとめて支払っていれば、来期の分まで当期の費用に混ざっています。仕入れた商品が売れ残っていれば、仕入額のうち売れた分だけが当期の原価のはずなのに、全額が費用として並んでいます。建物や備品は使うほど価値が減っているのに、帳簿では買ったときの金額のままです。
こうした「期中の記録」と「決算日の実態」のズレを埋めるのが決算整理であり、決算という手続きの中心です。決算整理をしない帳簿からは、正しい当期純利益も正しい財産の状態も出てこない — この一点を押さえておくと、以降に出てくる個々の仕訳がなぜ必要なのかが腑に落ちます。
出題区分表における「決算」の位置づけ
日商簿記の出題範囲は、日本商工会議所が公表する出題区分表で級ごとに定められています。商業簿記の区分表では「第三 決算」という大項目が独立して置かれ、3級の範囲として試算表の作成、8桁の精算表、決算整理、決算整理後残高試算表、収益と費用の損益勘定への振替、純損益の繰越利益剰余金勘定への振替、帳簿の締切(英米式決算法)、損益計算書と貸借対照表の作成が並びます。
つまり簿記3級の決算は、決算整理仕訳だけを指す言葉ではありません。整理して、集計して、振り替えて、帳簿を締めて、財務諸表にするところまでが一続きの範囲です。次の章では、その流れを5つのステップに分けて全体像から押さえていきます。なお試験範囲は数年おきに改定されるため、受験する回に適用される出題区分表は商工会議所の公式サイトで確認してください。
決算手続きの流れ — 5ステップの全体像をつかむ
決算は、決まった順番で進む定型作業です。順番を体で覚えてしまえば、問題文の指示がどのステップの話をしているのかが即座に判断できるようになります。簿記3級で扱う決算手続きは、大きく次の5ステップに分かれます。
| 順番 | ステップ | やること | 成果物 |
|---|---|---|---|
| 1 | 決算予備手続 | 期中の総勘定元帳の残高を集計し、貸借が一致するか確かめる | 決算整理前残高試算表 |
| 2 | 決算整理 | 期中の記録と決算日の実態のズレを仕訳で直す | 決算整理仕訳 |
| 3 | 整理後の集計 | 整理を反映した残高を一覧にする(精算表で代用することも多い) | 決算整理後残高試算表・精算表 |
| 4 | 決算本手続 | 収益・費用を損益勘定へ振り替え、当期純利益を確定して帳簿を締め切る | 決算振替仕訳・締め切った帳簿 |
| 5 | 財務諸表の作成 | 確定した残高を報告用の形式に並べ替える | 損益計算書・貸借対照表 |
ステップ1〜2 — 集計してから、ズレを直す
最初に行うのは決算予備手続です。総勘定元帳の各勘定の残高を集めて残高試算表を作り、借方合計と貸方合計が一致することを確認します。ここで一致しなければ期中の転記に誤りがあるということなので、決算整理に進む前に原因を潰します。試験では「決算整理前残高試算表」として、この段階の数字が資料として与えられるのが普通です。
続くステップ2の決算整理が、決算の本丸です。売上原価の算定、貸倒引当金の設定、減価償却、経過勘定の計上といった仕訳を、問題文の決算整理事項の指示どおりに切っていきます。第3問で問われる作業の大半はこのステップに集中しているため、本記事も第3章から第6章まで4章を使って論点別に扱います。
ステップ3〜5 — 集計し直し、締め切り、報告する
決算整理仕訳を反映させた残高を一覧にしたものが決算整理後残高試算表です。前残高試算表に整理仕訳を加減した結果がここに現れます。試験では、この一覧を横方向の計算で一枚にまとめた8桁の精算表という形式が使われることも多く、どちらの形式でも中身は同じ計算をしています。
ステップ4の決算本手続では、収益と費用の各勘定を損益勘定に振り替えて当期純利益を計算し、その利益を繰越利益剰余金勘定へ振り替えます。この振替によって収益・費用の勘定は残高ゼロになり、翌期はまっさらな状態から記録を始められます。最後のステップ5で、確定した残高を損益計算書と貸借対照表という報告用の書式に並べ替えれば決算は完了です。決算の終着点であるこれらの決算書の読み方は、貸借対照表の読み方を解説した記事もあわせて確認しておくと理解が立体的になります。
決算整理①売上原価の算定 — 決算で最初に来る関門
決算整理事項の一覧で、たいてい1番目に置かれているのが商品棚卸、すなわち売上原価の算定です。期中は商品を仕入れるたびに仕入勘定に金額を積み上げているだけなので、そのままでは「仕入れた金額」しか分かりません。当期の利益を計算するために必要なのは「売れた分の原価」、つまり売上原価です。決算整理では、この売上原価を計算する形に帳簿を作り替えます。
売上原価は仕入勘定の中で計算する
3級で標準的に使われる三分法では、売上原価を次の式で求めます。
前期から繰り越されてきた在庫(期首商品棚卸高)は、当期に売られた可能性があるので原価に加えます。逆に決算日に売れ残っている在庫(期末商品棚卸高)は、当期の原価ではないので差し引きます。この加減算を、仕入勘定と繰越商品勘定のあいだの振替として仕訳で表現するのが決算整理です。
「しーくりくりしー」の2本の仕訳
実際に切る仕訳は2本だけです。覚え方として有名な「しーくりくりしー」は、この2本の借方科目の頭文字を並べたものです。
- 期首の在庫を仕入に振り替える: (借)仕入 ×× / (貸)繰越商品 ××
- 期末の在庫を繰越商品に振り替える: (借)繰越商品 ×× / (貸)仕入 ××
数字を入れてみます。期首商品棚卸高が80,000円、当期仕入高が600,000円、期末商品棚卸高が100,000円だったとしましょう。1本目で仕入に80,000円が足され、2本目で100,000円が引かれるので、仕入勘定の残高は600,000+80,000-100,000=580,000円になります。これが当期の売上原価です。同時に繰越商品勘定の残高は期末の100,000円に置き換わり、貸借対照表に載る商品の金額になります。1本目と2本目で繰越商品の位置が貸方・借方と入れ替わる点だけ間違えなければ、この論点は確実に取れます。
「売上原価は売上原価勘定で計算する」と指示されたら
問題文によっては、仕入勘定ではなく売上原価勘定を使って計算するよう指示されることがあります。このときは仕訳が3本になり、期首商品棚卸高と当期仕入高をいったん売上原価勘定に集めてから、期末商品棚卸高を繰越商品に戻します。借方科目が仕入から売上原価に変わるだけで、計算している中身は同じです。指示を読み飛ばして反射的に「しーくりくりしー」を書くと全滅するので、決算整理事項の文末まで必ず読んでください。
なお、在庫が帳簿より少ない棚卸減耗や、価値が下がった商品の評価替えは2級の範囲で、3級では扱いません。3級の商品棚卸は、与えられた期末商品棚卸高をそのまま使う素直な計算だと考えて構いません。精算表の上でこの2本の仕訳がどう動くかは、精算表の書き方と解き方をまとめた記事で欄ごとに追いかけています。
決算整理②貸倒引当金の設定と減価償却
売上原価の次に定番なのが、貸倒引当金と減価償却です。どちらも「将来こうなるであろう金額を、当期の費用として先に計上する」という共通の発想に立っています。現金は1円も動かないのに費用が発生するため、初学者がつまずきやすい場所でもあります。
貸倒引当金 — 差額補充法で不足分だけを計上する
売掛金や受取手形は、取引先が倒産すれば回収できません。この回収不能の見積り(出題区分表の言葉では貸倒見積り)を決算で行い、見積額を貸倒引当金として計上します。計算式は決算日の売上債権残高に貸倒実績率を掛けるだけです。
3級で使うのは差額補充法です。すでに貸倒引当金の残高がある場合、設定額との差額だけを追加計上します。たとえば売掛金と受取手形の合計が500,000円、実績率2%なら設定額は10,000円。決算整理前の貸倒引当金残高が3,000円あるなら、仕訳は(借)貸倒引当金繰入 7,000 /(貸)貸倒引当金 7,000 となります。10,000円をそのまま繰り入れるのは典型的な失点パターンなので、設定額を出したら必ず前残高を引いてください。逆に前残高のほうが多ければ、超過分を貸倒引当金戻入として収益に計上します。
減価償却 — 定額法と月割計算
建物・備品・車両運搬具といった有形固定資産は、使用や時の経過とともに価値が減ります。この価値の目減りを費用として配分する手続きが減価償却です。3級で使う計算方法は定額法だけで、残存価額はゼロとする出題がほとんどです。
仕訳は間接法で、(借)減価償却費 ×× /(貸)減価償却累計額 ×× と切ります。資産の勘定を直接減らさず、減価償却累計額という勘定に累積させていくのが間接法の特徴です。貸借対照表では、取得原価から累計額を差し引く形で表示されます。
注意が必要なのは、当期の途中で取得した資産です。この場合は使った月数だけを計上する月割計算になります。1年分の減価償却費に「取得月から決算日までの月数÷12」を掛けてください。10月1日に取得して3月31日が決算日なら6か月分です。取得日が問題文の中の別の場所(期中取引の記述)に紛れていることもあるので、資料全体に目を通してから計算します。減価償却の考え方そのものを基礎から確認したい場合は、減価償却の意味と計算方法を解説した記事を先に読むと理解が早まります。
決算整理③経過勘定 — 前払・前受・未収・未払と再振替仕訳
出題区分表に「収益・費用の前受け・前払いと未収・未払い」として挙げられている論点が、いわゆる経過勘定です。支払った(受け取った)タイミングと、その費用(収益)が実際に発生する期間がズレているときに、当期に属する分だけを残すよう調整します。決算整理の中でも出題頻度が高く、第1問の仕訳問題でも単独でよく問われます。
4つの型を一枚で整理する
経過勘定は4種類しかありません。「当期に払いすぎ・もらいすぎ」なら次期に繰り延べ、「当期分なのにまだ払っていない・もらっていない」なら当期に見越して計上する、という2軸で整理できます。
| 状況 | 勘定科目 | 分類 | 決算整理仕訳 |
|---|---|---|---|
| 費用を前払いした(繰延べ) | 前払費用(前払保険料など) | 資産 | (借)前払費用 /(貸)保険料 |
| 収益を前受けした(繰延べ) | 前受収益(前受家賃など) | 負債 | (借)受取家賃 /(貸)前受収益 |
| 費用がまだ未払い(見越し) | 未払費用(未払利息など) | 負債 | (借)支払利息 /(貸)未払費用 |
| 収益がまだ未収(見越し) | 未収収益(未収家賃など) | 資産 | (借)未収収益 /(貸)受取家賃 |
迷ったときは、費用・収益の勘定を先に決めるのが確実です。払いすぎた費用は減らすので貸方、当期分の未払費用は増やすので借方。相手科目の資産・負債は、その反対側に自動的に決まります。「前払」で始まる科目は資産、「前受」で始まる科目は負債という対応も、貸借対照表に載せるときに効いてきます。
月数の数え方で差がつく
経過勘定は金額の計算そのものが問われます。典型は「X1年8月1日に向こう1年分の保険料12,000円を支払った。決算日はX2年3月31日」というパターンです。8月から翌年3月までの8か月分が当期の費用、4月から7月までの4か月分が次期の分なので、前払保険料は12,000×4/12=4,000円になります。この4,000円を保険料から差し引く決算整理仕訳が(借)前払保険料 4,000 /(貸)保険料 4,000 で、当期の費用として損益計算書に残るのは8か月分の8,000円です。支払日を含む月から決算日の月までを指折り数えるのが確実で、慣れるまでは問題用紙の余白にカレンダーの線を引くのが有効です。
翌期首の再振替仕訳
経過勘定には後日談があります。決算で計上した前払費用や未払費用は、翌期首に元の費用・収益の勘定へ戻す再振替仕訳を行います。先ほどの例なら、翌期首に(借)保険料 4,000 /(貸)前払保険料 4,000 と切って、次期の費用として計上し直すわけです。これをしておくと、翌期に同じ保険料を支払ったときも通常どおりの処理で済みます。決算整理仕訳とちょうど貸借が逆になるだけなので、セットで覚えてしまうのが効率的です。第1問では、この再振替仕訳のほうが出題されることもあります。
決算整理④現金過不足・当座借越・貯蔵品・消費税・法人税等
売上原価・貸倒引当金・減価償却・経過勘定という4大論点のほかにも、決算のタイミングで処理する項目がいくつかあります。1つひとつは仕訳1本で終わる小さな論点ですが、第3問では必ず数個が混ぜ込まれており、ここを取りこぼすと合格ラインが遠のきます。まとめて確認しておきましょう。
期中の未確定を決着させる処理
- 現金過不足の整理
- 期中に現金の実際有高と帳簿残高がズレて現金過不足勘定に入れていた金額のうち、決算日まで原因が判明しなかった分を雑損(借方残の場合)または雑益(貸方残の場合)に振り替えます。現金過不足勘定は決算後に残してはいけない仮の勘定です。
- 仮払金・仮受金の精算
- 内容が確定していない出金・入金を入れておく勘定です。決算日までに内容が判明したものは、旅費交通費や売掛金といった正しい科目へ振り替えます。判明しないまま決算を迎える設定は3級ではまず出ません。
- 当座借越の振替
- 当座預金が貸方残高になっている場合、それは実質的に銀行からの借入です。決算では当座借越(または借入金)という負債の勘定へ振り替えます。翌期首には再振替仕訳で元に戻します。
- 貯蔵品への振替
- 購入時に租税公課として処理した収入印紙や、通信費として処理した郵便切手のうち、決算日に未使用のものを貯蔵品(資産)へ振り替えます。こちらも翌期首に再振替を行います。収入印紙の勘定科目の扱いは収入印紙の勘定科目を解説した記事で詳しく整理しています。
消費税と法人税等 — 決算で納付額を確定させる
税抜方式で処理している消費税は、期中に仮払消費税と仮受消費税として別々に積み上がっています。決算ではこの2つを相殺し、差額を未払消費税(納付する場合)として計上します。仮受消費税が180,000円、仮払消費税が120,000円なら、(借)仮受消費税 180,000 /(貸)仮払消費税 120,000・未払消費税 60,000 という仕訳です。相殺後に仮払・仮受の勘定を残さないのが鉄則です。
法人税等は、決算で当期の利益が確定してはじめて金額が計算できるため、決算整理の最後に回すのが定石です。税引前の当期純利益に税率を掛けて年税額を求め、中間納付として仮払法人税等に計上済みの金額を差し引いた残りを未払法人税等とします。中間納付の有無は問題文にしか書かれていないので、資料を読み飛ばさないでください。これらの決算整理仕訳を1本ずつ手を動かして確認したい場合は、簿記3級の仕訳問題をパターン別にまとめた記事から論点別の練習に進むのが近道です。
決算振替仕訳と帳簿の締切 — 英米式決算法
決算整理が終わったら、次は帳簿を締め切る作業に移ります。ここで登場するのが決算振替仕訳です。決算整理仕訳が「金額を実態に合わせる仕訳」だったのに対し、決算振替仕訳は金額を動かさずに、利益を確定させて残高を移すための仕訳です。この違いを取り違えると、精算表の修正記入欄に決算振替仕訳を書いてしまうという事故が起きます。
決算振替仕訳は3本セット
手順は決まっています。まず収益をすべて損益勘定の貸方に集め、次に費用をすべて損益勘定の借方に集め、最後に差額として出てきた当期純利益を繰越利益剰余金勘定へ振り替えます。
- 収益の振替: (借)売上・受取手数料など ×× /(貸)損益 ××
- 費用の振替: (借)損益 ×× /(貸)仕入・給料・支払家賃など ××
- 当期純利益の振替: (借)損益 ×× /(貸)繰越利益剰余金 ××
1本目と2本目が終わった時点で、損益勘定の貸方には収益の合計、借方には費用の合計が並びます。その差額が当期純利益です。貸方のほうが大きければ利益なので3本目の仕訳になり、逆に借方が大きい(当期純損失)なら(借)繰越利益剰余金 /(貸)損益 と貸借が逆になります。損益という勘定は、当期の損益計算書をそのまま勘定の形にしたものだと考えると腹落ちします。
英米式決算法による帳簿の締切
決算振替仕訳によって、収益と費用の勘定はすべて残高がゼロになりました。残るのは資産・負債・純資産の勘定です。これらは翌期に引き継ぐ必要があるため、締切の方法が異なります。3級で学ぶ英米式決算法では、資産・負債・純資産の各勘定の残高側と反対側に「次期繰越」と朱記して貸借を一致させ、二重線を引いて締め切ります。そして翌期首に、反対側へ「前期繰越」と記入して再開する — これが英米式決算法の仕組みです。
収益・費用の勘定は損益勘定への振替によってすでにゼロになっているので、そのまま二重線で締め切ります。総勘定元帳だけでなく、補助簿の締切も出題範囲に含まれます。
繰越試算表は現行の3級範囲に入っていない
英米式決算法をひととおり学ぶと、締切の正しさを確かめるために繰越試算表を作る話が出てきます。ただし現行の出題区分表では、3級の項目として繰越試算表は挙げられておらず、代わりに決算整理後残高試算表が置かれています。2019年度の改定でこの入れ替えが行われたため、古い年度の教材や古い解説記事には繰越試算表の作成問題が残っていることがあります。手持ちの教材が改定前のものだと、範囲外の論点に時間を使うことになるので、購入年度は確認しておいてください。締切の考え方そのものは3級の範囲に残っているため、理解しておくこと自体は無駄になりません。
決算整理後残高試算表・精算表・財務諸表 — 3つのゴールと第3問35点
簿記3級の試験で決算がどう出るかというと、第3問がまるごと決算の総合問題です。配点は35点で、第1問の仕訳45点に次ぐ大きさ。しかも第1問の仕訳15問の中にも決算整理仕訳が混ざるため、決算まわりだけで40点前後を占めるのが通例です。大問ごとの得点配分は簿記3級の配点を解説した記事で詳しく扱っています。
第3問で問われる3つの形式
| 出題形式 | 解答するもの | 特徴 |
|---|---|---|
| 精算表の作成 | 8桁精算表の修正記入欄・損益計算書欄・貸借対照表欄 | 横の足し引きが機械的で、部分点を拾いやすい |
| 財務諸表の作成 | 損益計算書と貸借対照表 | 表示科目への読み替えが必要で難度が上がる |
| 決算整理後残高試算表の作成 | 整理後の各勘定残高 | 読み替えが不要な代わり、勘定の数が多い |
どの形式が出ても、解答を作るための土台は同じ決算整理仕訳です。形式ごとに勉強し直す必要はなく、決算整理仕訳を正確に切れるようになったうえで、それぞれのゴールへの並べ方を確認しておけば足ります。精算表形式の解き方の手順は8桁精算表の解き方をまとめた記事にまとめました。
財務諸表形式で必要になる科目名の読み替え
財務諸表を作成する形式で差がつくのが、帳簿上の勘定科目から表示科目への読み替えです。帳簿の名前のまま書くと不正解になる箇所があるため、対応を覚えておきます。
- 繰越商品 → 貸借対照表では「商品」
- 仕入 → 損益計算書では「売上原価」
- 売上 → 損益計算書では「売上高」
- 前払保険料・未払利息など → 貸借対照表では「前払費用」「未払費用」とまとめる場合がある
- 貸倒引当金・減価償却累計額 → 売掛金や備品から控除する形式で表示する
もう1つの落とし穴が当期純利益の扱いです。損益計算書の末尾に出てくる当期純利益は、貸借対照表ではそのままの名前では載りません。決算振替仕訳で繰越利益剰余金へ振り替えられるので、貸借対照表には決算整理前の繰越利益剰余金に当期純利益を加算した金額が繰越利益剰余金として表示されます。精算表形式ではこの加算をしないため、形式が変わったときに間違えやすい箇所です。
決算整理後残高試算表という形式
決算整理後残高試算表は、決算整理を反映した各勘定の残高をそのまま一覧にしたものです。表示科目への読み替えが要らないぶん取り組みやすい一方、解答欄の数が多く、1つの決算整理仕訳が2つ以上の解答欄に影響するため、計算ミスが連鎖しやすい形式でもあります。仕入と繰越商品、貸倒引当金と貸倒引当金繰入のように、セットで動く勘定を意識して埋めていくとミスが減ります。
決算の問題を解く手順・時間配分とつまずきポイント
決算の総合問題は、知識が足りなくて解けないというより、手順が定まっていないせいで時間切れになるケースが目立ちます。60分の試験でどう戦うかを先に決めておきましょう。
解く手順は「仕訳を全部書き出してから、解答欄を埋める」
おすすめは、決算整理事項を上から順に読んで、問題用紙の余白に決算整理仕訳をすべて書き出してしまう方法です。仕訳が出そろってから解答欄に反映させれば、行ったり来たりの手戻りがなくなります。頭の中だけで処理して直接解答欄を埋めるやり方は速そうに見えて、1か所間違えたときに原因を追えなくなるため、結果的に遅くなります。
- 会計期間と決算日に印をつける
- 決算整理事項を順に読み、余白に仕訳を書き出す(金額まで計算する)
- 計算に時間がかかる項目(法人税等など)は後回しにして印をつけておく
- 書き出した仕訳を解答欄に反映させる
- 残った項目を処理し、貸借合計や利益を検算する
60分の中での時間配分
標準的な配分は、第1問(仕訳)に20分、第2問に10分、第3問(決算)に25分、見直しに5分です。第3問に25分を確保するには、第2問で粘りすぎないことが肝心になります。配点20点の第2問に時間を吸われて配点35点の第3問が白紙になるのが、最も避けたい負け方です。第3問を先に解いてしまう順番も有力で、模擬演習の段階で自分に合う順番を決めておくとよいでしょう。
つまずきやすい3か所
- 差額を計算し忘れる
- 貸倒引当金の差額補充法、法人税等の中間納付控除、消費税の相殺は、いずれも「前残高を差し引く」処理です。設定額や年税額をそのまま計上してしまう誤りが最も多く出ます。
- 月割計算を忘れる
- 期中取得の固定資産の減価償却と、経過勘定の月数按分。問題文の日付を見た瞬間に「何か月分か」を余白に書く習慣をつけると防げます。
- 形式による違いを混同する
- 精算表なのか財務諸表なのかで、繰越利益剰余金の扱いと科目名が変わります。解き始める前に、何を作る問題なのかを確認してください。
決算を得点源にする練習の回し方
決算整理は論点の数が限られているぶん、反復の効果がはっきり出る領域です。まず個々の決算整理仕訳を単独の仕訳問題として繰り返し、迷わず手が動く状態を作ります。そのうえで総合問題に進むと、時間を使うのが計算部分だけになり、25分に収まるようになります。論点別に演習できる素材は簿記3級の練習問題をまとめた記事から探せます。
まとめ — 決算は「ズレを直して、集めて、締める」の3動作
簿記3級の決算は、覚えることが多いように見えて、やっていることは3つしかありません。期中の記録と決算日の実態のズレを決算整理仕訳で直し、収益と費用を損益勘定に集めて当期純利益を確定し、帳簿を締め切って財務諸表に並べ替える。この3動作の順番さえ頭に入っていれば、どの問題を見ても自分が今どこにいるかを見失いません。
- 決算手続きは、決算予備手続 → 決算整理 → 整理後の集計 → 決算本手続 → 財務諸表の作成の5ステップで進む
- 3級の決算整理は、売上原価の算定・貸倒引当金・減価償却・経過勘定の4大論点に、現金過不足・当座借越・貯蔵品・消費税・法人税等が加わる
- 決算振替仕訳は金額を直す仕訳ではなく、損益勘定を経由して当期純利益を繰越利益剰余金へ移すための仕訳
- 帳簿の締切は英米式決算法。繰越試算表は現行の3級範囲に入っておらず、決算整理後残高試算表が置かれている
- 第3問35点は決算の総合問題。精算表・財務諸表・決算整理後残高試算表のどれが出ても、土台は同じ決算整理仕訳
そして、決算の得点力を決めるのは結局のところ仕訳の速さと正確さです。売上原価の2本、差額補充法、月割の減価償却、経過勘定の4パターン — この定番を見た瞬間に手が動くようになれば、第3問は計算作業だけの問題に変わります。Love.Accountants の仕訳ドリルは、勘定科目を選んで金額を入力する本試験と同じ形式で、決算の論点だけを繰り返し練習できます。1回数分から回せるので、テキストを一周したあとの仕上げに使ってみてください。
