精算表とは?8桁精算表の仕組みをわかりやすく解説
精算表とは、決算整理前の残高試算表から、損益計算書と貸借対照表を作り上げるまでの流れを1枚の表にまとめたものです。日商簿記3級(日商簿記3級と表記されることもあります)の学習では、決算という手続き全体を目で見て理解するための教材として最初に登場し、そのまま試験の第3問で出題される重要論点でもあります。難しそうな見た目をしていますが、やっていることは「試算表の金額に決算整理の金額を足し引きして、正しい金額を損益計算書と貸借対照表に振り分ける」だけです。
なぜ精算表という表が必要なのか
会社は1年に一度、決算を行って利益を計算します。ところが期中に記録してきた帳簿の金額は、そのままでは正しい期末の金額になっていません。売れ残った商品はまだ費用にしてはいけませんし、まだ支払っていない家賃も当期の費用に入れる必要があります。こうしたズレを直す作業が決算整理です。
この決算整理を頭の中だけで処理すると必ずミスが出ます。そこで、決算整理前の金額・整理の金額・整理後の金額を並べて書き、貸借が一致するかを確認しながら財務諸表を組み立てるための下書き用紙として使うのが精算表です。実務では会計ソフトが自動計算するため精算表を作る場面は減りましたが、複式簿記の一連の流れを理解しているかを問うには最適な教材であり、だからこそ試験で問われ続けています。
8桁精算表の6つの列(4つの欄)
簿記3級で扱うのは8桁精算表です。「8桁」というのは金額を書く列が8本あるという意味で、4つの欄がそれぞれ借方・貸方の2列を持つため合計8列になります。左から順に次のように並びます。
| 欄の名前 | 列 | 何が書いてあるか |
|---|---|---|
| 残高試算表欄 | 借方・貸方 | 決算整理前の各勘定の残高。問題文にあらかじめ印刷されている |
| 修正記入欄 | 借方・貸方 | 決算整理仕訳の金額。整理記入欄とも呼ばれる |
| 損益計算書欄 | 借方・貸方 | 収益・費用の整理後の金額。借方が費用、貸方が収益 |
| 貸借対照表欄 | 借方・貸方 | 資産・負債・純資産の整理後の金額。借方が資産、貸方が負債と純資産 |
試算表の欄を含めて4欄8列なので8桁精算表と呼びます。なお簿記2級以上では、これに「修正後残高試算表欄」を加えた10桁精算表が登場することもありますが、3級で問われるのは8桁だけです。
決算手続きの中での位置づけ
精算表がどこに位置するのかを、決算という手続き全体の流れで確認しておきましょう。この順序が頭に入っていると、表の各欄が何を表しているのかで迷わなくなります。
- 期中の取引を仕訳し、総勘定元帳へ転記する
- 決算日に、元帳の残高を集めて残高試算表を作る(精算表の一番左の欄)
- 決算整理仕訳を行う(精算表の修正記入欄)
- 整理後の金額を、収益・費用は損益計算書へ、資産・負債・純資産は貸借対照表へ振り分ける
- 当期純利益を計算し、帳簿を締め切る
つまり精算表は、2から4までを1枚に凝縮した表です。1行が1つの勘定科目に対応しており、左から右へ金額を動かしていくと、その勘定が最終的に損益計算書と貸借対照表のどちらに、いくらで載るのかが分かる仕組みになっています。複式簿記の基本ルールである貸借一致は、どの欄でも成り立っていなければなりません。簿記そのものの成り立ちから確認したい場合は複式簿記の解説も参考にしてください。
「精算書」ではなく「精算表」
検索では「精算書」と入力されることもありますが、簿記の正式な名称は精算表です。精算書は経費精算などで使う別の書類を指すため、教材を探すときは精算表で検索したほうが目的の情報にたどり着けます。
試験に出る?出ない?ネット試験の第3問と出題確率
精算表が試験に出るのかどうかは、学習者が最も気にするポイントです。結論から書くと、簿記3級の第3問で精算表は出題されます。ただし毎回必ず出るわけではないため、「出る」「出ない」の両方の情報がネット上に混在しています。まずは事実関係を整理しましょう。
第3問は3つの形式のうち1つが出る
簿記3級の第3問は決算に関する総合問題で、次の3つの形式のいずれか1つが出題されます。
- 精算表の作成 — 残高試算表と決算整理事項から精算表を完成させる
- 財務諸表(損益計算書・貸借対照表)の作成 — 決算整理後の金額を財務諸表の様式に直接記入する
- 決算整理後残高試算表の作成 — 決算整理後の各勘定残高を試算表の形にまとめる
どの形式が出るかは受験するまで分かりません。つまり精算表が出る回もあれば、出ない回もあるということです。「精算表が出る確率は3分の1」と単純化されることもありますが、過去の統一試験を通してみると精算表と財務諸表の2形式が出題の中心で、この2つがほぼ同程度の頻度で問われてきました。確率で考えるより、3形式すべてを解けるようにしておくのが唯一の正解です。幸いこの3つは解答用紙の形が違うだけで、必要な決算整理仕訳はまったく同じですから、対策の手間は3倍にはなりません。第3問全体の位置づけは簿記3級の問題の解説でも確認できます。
「ネット試験に精算表は出ない」は誤り
ネット試験(CBT方式)について、「精算表は出ない」「でない」という情報を見かけることがあります。これは正確ではありません。ネット試験と統一試験は出題範囲・出題区分表・配点・合格基準がすべて同一で、ネット試験の第3問でも精算表は問われます。3級ネット試験を受けるからといって精算表を捨てる判断は危険です。
この噂が生まれた理由はおそらく2つあります。1つは、ネット試験が受験者ごとにランダム出題であるため「自分のときは出なかった」という体験談が広がりやすいこと。もう1つは、画面上で表を埋める操作の都合上、財務諸表形式のほうが出題されやすいと感じた受験者がいることです。いずれも範囲から外れた根拠にはなりません。ネット試験の申し込みや当日の流れは簿記3級のネット試験の完全ガイドにまとめています。
ネットの画面で精算表を解くときの注意点
ネット試験で精算表が出た場合、紙とは操作感が変わります。金額はテンキーで入力し、勘定科目が空欄になっている行はプルダウンから選択します。紙の試験のように解答用紙へ書き込みながら考えることができないため、貸与される計算用紙に決算整理仕訳をすべて書き出してから、画面に転記する手順が安全です。画面上では列がスクロールで隠れることもあるので、どの欄に入力しているのかを都度確認してください。この操作感は模擬試験プログラムで一度体験しておけば十分に慣れます。
過去問で出題傾向をつかむときの注意
出題傾向を知るために過去問を使うのは有効ですが、ネット試験には公開された過去問がありません。統一試験の過去問も商工会議所は現在公表しておらず、市販の問題集に収録された予想問題や、各社が公開している模擬問題を使うことになります。また2021年度の試験改定より前の過去問は、試験時間120分・大問5問という現行と異なる形式なので、古い年度のものは使わないでください。入手先は簿記3級の過去問を無料で解く方法で整理しています。
簿記2級の精算表との違い
先の級を見据えておくと、3級で精算表を学ぶ意味がはっきりします。簿記2級でも精算表は第3問で出題されますが、扱う決算整理の項目が増え、売上原価の算定に加えて棚卸減耗損・商品評価損、貸倒引当金の区分、税効果会計などが乗ってきます。表の構造と埋める手順そのものは3級とまったく同じなので、3級で身につけた解き方は2級でそのまま使えます。逆に言えば、ここで手順を曖昧にしたまま先へ進むと2級で必ず苦労します。
精算表の配点と採点方法 — 35点で部分点をどう拾うか
精算表の問題が出る第3問の配点は35点です。試験全体は100点満点で70点以上が合格ですから、第3問は合否に直結する大問といえます。ただし35点を丸ごと落とすことも、逆に完成させられなくても点が積み上がることもある——その仕組みを知っているかどうかで、本番の戦い方は大きく変わります。
試験全体の中での35点という重み
まず簿記3級の配点の詳細を読む">簿記3級の配点を全体で確認しておきます。
| 大問 | 出題内容 | 配点 |
|---|---|---|
| 第1問 | 仕訳問題15問 | 45点 |
| 第2問 | 勘定記入・補助簿・伝票・語句記入など | 20点 |
| 第3問 | 決算の総合問題(精算表・財務諸表など) | 35点 |
第1問で満点の45点を取っても、それだけでは合格ラインの70点に届きません。第3問で最低でも20点前後を確保する計算が現実的で、逆に第3問で25点以上を安定して取れるようになると合格がぐっと近づきます。試験時間は60分、統一試験・ネット試験とも同じ配点です。
採点方法は「解答欄1つごと」の積み上げ
精算表の採点方法は、表全体を完成させたかどうかで見るのではありません。解答欄(記入箇所)ごとに点数が振られており、正しく埋めた箇所の分だけ加点されます。35点を、配点対象となる十数か所の記入欄で分け合うイメージです。1か所あたり2点や3点といった配点になり、どこが配点箇所になるかは受験者には知らされません。
この方式の重要な帰結が2つあります。1つは、表が完成しなくても得点になるということ。時間切れで下のほうが空欄でも、埋めた部分が合っていれば点は入ります。もう1つは、1か所の誤りが後ろに波及しても、波及先の欄が全滅するとは限らないということです。ただし合計行や当期純利益の行は、そこまでの数字を集計した結果なので、途中でずれると連鎖して失点します。
修正記入欄に配点はあるのか
よく聞かれるのが、修正記入欄そのものに配点があるのかという疑問です。修正記入欄に配点が振られる場合もありますが、採点の中心は損益計算書欄と貸借対照表欄の金額だと考えておくのが安全です。修正記入は途中の作業であり、最終的に財務諸表の金額として正しく反映されているかが問われるためです。
したがって、修正記入欄を丁寧に書くことは「点を取るため」というより「正しい財務諸表の金額を導くため」の手段です。時間が足りないときも修正記入を省略してはいけません。頭の中で足し引きすると必ずミスが出ます。
部分点を最大化する解答の順番
部分点の仕組みを踏まえると、本番での動き方が決まります。
- 確実に処理できる決算整理から先に反映する — 減価償却や貸倒引当金など、計算が単純なものを先に埋める
- 1つの決算整理は必ず最後まで通す — 修正記入だけ書いて損益計算書欄・貸借対照表欄へ移すのを忘れると、配点箇所に届かない
- 影響のない行を先に埋める — 決算整理の対象にならない勘定は、残高試算表の金額をそのまま右へ移すだけで得点になる
- 当期純利益は最後に、時間がなければ捨てる — 全体が合っていないと正解できないため、深追いしない
つまり第3問は、満点を狙う大問ではなく「拾える点を確実に拾う」大問です。難しい決算整理に15分かけて全体を崩すより、簡単な項目を淡々と処理して25点を確保するほうが合格に近づきます。
精算表の書き方・作り方 — 埋める順番と手順
ここからが本題です。精算表の作成は、どの問題でもまったく同じ順番で進みます。この手順を体に入れてしまえば、初めて見る決算整理事項が混じっていても、残りの部分は機械的に処理できます。日商簿記3級の解き方として、まずは全体の流れを固定しましょう。
解き方の全体像 — 5ステップ
- 決算整理事項を読み、仕訳を計算用紙に書き出す — 表にはまだ何も書かない
- 仕訳の金額を修正記入欄に転記する — 借方は借方列、貸方は貸方列へ
- 修正記入欄の合計が借方=貸方になっているか確かめる — ここでずれていたら仕訳が間違っている
- 1行ずつ横に足し引きして、損益計算書欄か貸借対照表欄へ移す
- 損益計算書欄・貸借対照表欄を縦に集計し、当期純利益を求める
初心者がつまずくのは、ステップ1を飛ばしていきなり表に書き込もうとするからです。仕訳を書かずに精算表は埋まりません。逆に言えば、決算整理仕訳さえ正しく切れれば、あとは足し算と引き算の作業です。仕訳そのものに不安がある人は簿記3級の仕訳の型から固め直してください。
ステップ1〜2:決算整理仕訳を修正記入欄に書く
決算整理事項は問題文に「1. 期末商品棚卸高は…」のように箇条書きで並んでいます。これを上から順に仕訳へ翻訳します。日商の出題では、この仕訳が5〜8項目程度です。
仕訳ができたら、勘定科目の行を精算表から探して、修正記入欄の借方または貸方に金額を書きます。ここで気をつけるのは行が足りないケースです。減価償却費や貸倒引当金繰入など、決算整理で初めて登場する勘定科目は、残高試算表欄が空欄の行として精算表の下部にあらかじめ用意されています。用意されていない場合は自分で科目名を書き足します。ネット試験では、その行の科目名をプルダウンで選ぶ形式になります。
ステップ3:修正記入欄で貸借一致を確認する
すべての決算整理を書き込んだら、右へ進む前に修正記入欄の借方合計と貸方合計を計算します。仕訳は必ず借方と貸方が同額ですから、それを集めた修正記入欄も借方合計=貸方合計になります。ここが一致しないなら、転記漏れか金額の書き間違いが確実にあります。この時点なら手戻りは1分ですが、最後まで進んでから気づくと修復に10分かかります。ここで必ず一度止まって検算してください。
ステップ4:横に足し引きして右の欄へ移す
いよいよ横方向の計算です。1行ごとに、残高試算表の金額と修正記入の金額を合算し、結果を損益計算書欄か貸借対照表欄に書きます。ルールは単純です。
| 残高試算表の残高 | 修正記入 | 計算 |
|---|---|---|
| 借方 | 借方に金額あり | 足す(借方が増える) |
| 借方 | 貸方に金額あり | 引く(借方が減る) |
| 貸方 | 貸方に金額あり | 足す(貸方が増える) |
| 貸方 | 借方に金額あり | 引く(貸方が減る) |
同じ側なら足す、反対側なら引く——覚えるのはこれだけです。そして計算結果を書く場所は、その勘定科目が5要素のどれに属するかで決まります。
- 資産・負債・純資産 → 貸借対照表欄
- 収益・費用 → 損益計算書欄
移した後の借方・貸方は元の側と同じです。借方残高の資産なら貸借対照表欄の借方、貸方残高の収益なら損益計算書欄の貸方に書きます。決算整理の対象にならなかった行は、残高試算表の金額をそのまま右へスライドさせるだけなので、ここから先に手をつけると短時間で解答欄が埋まります。
埋める順番のおすすめ
作り方として効率がよいのは、次の順番です。
- 決算整理に関係のない行を全部右へ移す(機械作業。1〜2分)
- 決算整理のうち、他に影響しない独立した項目(減価償却・貸倒引当金・経過勘定)を処理する
- 売上原価の算定など、複数行が連動する項目を処理する
- 縦の合計と当期純利益を計算する
この順番なら、途中で時間切れになっても得点済みの欄が最大化されます。なお試算表を作る問題(決算整理後残高試算表)が出た場合も、ステップ3までは完全に同じです。違いは4以降で「右の2欄に振り分ける」か「1つの試算表にまとめる」かだけなので、精算表の手順を覚えておけばそのまま応用できます。
決算整理①売上原価の算定 — 繰越商品と期末商品棚卸高
精算表で最も間違えやすく、そして必ずと言っていいほど出題されるのが売上原価の算定です。ここだけで複数の解答欄が動くため、正解できるかどうかで得点が数点変わります。日商簿記3級の仕訳の詳細を読む">簿記3級の仕訳の中でも独特の形をしているので、丁寧に押さえましょう。
なぜ仕入勘定で売上原価を計算するのか
3級では商品売買を三分法(仕入・売上・繰越商品の3勘定)で処理します。期中は商品を買うたびに仕入勘定の借方へ計上していますが、この金額は「当期に買った商品の代金」であって「当期に売れた商品の原価」ではありません。売れ残った分は費用にできないからです。
そこで決算で、仕入勘定の金額を売上原価に作り替えます。計算式は次のとおりです。
期首に残っていた商品(前期の売れ残り)は当期に売れたはずなので加え、期末商品棚卸高(当期の売れ残り)はまだ売れていないので差し引く——この考え方さえ分かれば、仕訳は自然に出てきます。
「しーくりくりしー」の2本の仕訳
売上原価を仕入勘定で計算する場合、決算整理仕訳は次の2本です。
| 目的 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 期首分を仕入に振り替える | 仕入 ××× | 繰越商品 ×××(期首商品棚卸高) |
| 期末分を仕入から抜く | 繰越商品 ×××(期末商品棚卸高) | 仕入 ××× |
借方と貸方の科目の並びを読み上げると「仕入・繰越商品/繰越商品・仕入」となり、これを縮めた「しいくり くりしい」という語呂で覚えるのが定番です。1本目の金額は期首商品棚卸高、2本目の金額は期末商品棚卸高。金額を取り違えるミスが最も多いので、問題文のどちらの数字を使うのかを指差し確認してください。期首商品棚卸高は問題文に書かれていないこともあり、その場合は精算表の残高試算表欄にある繰越商品の金額がそれに当たります。
精算表の上での動き方
この2本の仕訳を修正記入欄に書くと、繰越商品の行と仕入の行に、それぞれ借方・貸方の両方に金額が入ります。慣れないうちは混乱しますが、横に足し引きすれば結果は明快です。
- 繰越商品の行:残高試算表の借方(期首の金額) + 修正記入の借方(期末) − 修正記入の貸方(期首) = 期末商品棚卸高。これが貸借対照表欄の借方に載ります。結果として期末の金額だけが残るのがポイントです。
- 仕入の行:残高試算表の借方(当期仕入高) + 修正記入の借方(期首) − 修正記入の貸方(期末) = 売上原価。これが損益計算書欄の借方に載ります。
数字を入れて確かめてみましょう。期首商品棚卸高100円・当期商品仕入高800円・期末商品棚卸高150円だとします。繰越商品の行は、残高試算表の借方100に修正記入の借方150を足し、修正記入の貸方100を引いて150。仕入の行は、残高試算表の借方800に修正記入の借方100を足し、修正記入の貸方150を引いて750です。この750が売上原価(100+800−150)であり、繰越商品に残った150が期末商品棚卸高そのものになります。
つまり計算式そのものが表の上で再現されているわけです。検算も簡単で、貸借対照表欄の繰越商品が期末商品棚卸高と一致していなければ、どこかで間違えています。
売上原価を「売上原価勘定」で計算する指示が出たら
問題文に「売上原価は売上原価勘定で計算する」と指示されることがあります。この場合は仕入勘定ではなく売上原価という行に集計するため、仕訳が3本になります。期首商品棚卸高を売上原価へ、当期仕入高を仕入から売上原価へ、期末商品棚卸高を売上原価から繰越商品へ振り替える形です。結果として仕入の行は損益計算書欄がゼロになり、売上原価の行に売上原価の金額が載ります。指示を読み飛ばして仕入勘定で処理すると全滅するので、決算整理事項の但し書きは必ず読んでください。
決算整理②貸倒引当金・減価償却・経過勘定(保険料)
売上原価の次に頻出なのが、この3つです。いずれも計算はシンプルで、覚えてしまえば確実に得点できる部分。精算表で使う勘定科目もほぼ固定されているので、型として頭に入れてしまいましょう。
貸倒引当金は「差額補充法」で不足分だけ
貸倒引当金は、売掛金や受取手形が回収できなくなる可能性に備えて、あらかじめ費用を見積もっておくものです。3級で問われるのはほぼ差額補充法です。
ここでの最大の注意点は、設定額の全額ではなく、既存の残高との差額だけを繰り入れることです。たとえば売掛金の期末残高が800,000円、設定率2%なら見積額は16,000円。精算表の残高試算表欄に貸倒引当金が6,000円あるなら、繰り入れるのは差額の10,000円です。
仕訳は「(借方)貸倒引当金繰入 10,000/(貸方)貸倒引当金 10,000」。精算表では、費用である貸倒引当金繰入が損益計算書欄の借方に、貸倒引当金は貸方残高のまま貸借対照表欄の貸方に載ります。貸倒引当金は資産のマイナスを表す科目ですが、書く場所は貸方である点を間違えないでください。なお設定率を掛ける対象は売掛金と受取手形の合計であり、貸付金や未収入金を含めるかどうかは問題文の指示に従います。
減価償却は定額法、期中取得は月割
建物や備品といった固定資産は、使うほど価値が減るため、その分を費用にします。3級で使うのは定額法です。
近年の出題は残存価額ゼロが主流なので、実質は取得原価÷耐用年数です。仕訳は間接法で「(借方)減価償却費/(貸方)備品減価償却累計額」。減価償却費は損益計算書欄の借方、累計額は貸倒引当金と同じく資産のマイナスとして貸借対照表欄の貸方に載ります。
ここでの落とし穴が期中に取得した資産です。当期の途中で買ったものは、使った月数分だけを費用にします。たとえば10月1日に取得し決算が3月31日なら6か月分、年額に12分の6を掛けます。問題文に取得日が書かれていたら月割計算の合図だと考えてください。減価償却そのものの考え方は減価償却の解説で詳しく扱っています。
経過勘定 — 保険料・家賃の前払いと未払い
支払いや受け取りのタイミングと、費用・収益として認識すべき期間がずれているものを調整するのが経過勘定です。4種類あります。
| 種類 | 状況 | 決算整理仕訳 | 貸借対照表欄 |
|---|---|---|---|
| 前払費用 | 費用を先に払った | (借)前払○○/(貸)費用の科目 | 借方(資産) |
| 未払費用 | 費用がまだ未払い | (借)費用の科目/(貸)未払○○ | 貸方(負債) |
| 前受収益 | 収益を先に受け取った | (借)収益の科目/(貸)前受○○ | 貸方(負債) |
| 未収収益 | 収益がまだ未収 | (借)未収○○/(貸)収益の科目 | 借方(資産) |
典型例が保険料です。「保険料は当期の8月1日に向こう1年分を支払ったものである」とあれば、決算日(3月31日)の時点で4か月分(4月〜7月)が翌期の費用です。支払額の12分の4を、保険料から前払保険料へ振り替えます。仕訳は「(借方)前払保険料/(貸方)保険料」。精算表では保険料の行が修正記入の貸方で減り、新しく前払保険料の行が借方に立ちます。
経過勘定は「何か月分をずらすのか」を数える作業がすべてです。カレンダーを頭に浮かべて、当期(4月〜3月)に属する月と翌期に属する月を指で数えれば間違えません。地代・家賃・利息も同じ考え方で処理します。
決算整理③法人税等・消費税・当座借越 — 差がつく残りの論点
ここまでの3項目を確実に処理できれば土台は完成です。そのうえで合否を分けるのが、この章で扱う「その他の決算整理」。出題頻度は売上原価ほどではありませんが、出たときに手が止まる人が多いため、知っているだけで差がつきます。
法人税等 — 中間納付があるかを確認する
会社の利益に対して課される法人税、住民税及び事業税を、決算で確定させます。精算表では「法人税等」または「法人税、住民税及び事業税」という行で処理します。
基本の仕訳は「(借方)法人税等/(貸方)未払法人税等」。ただし期中に中間申告で納めている場合は、残高試算表欄に仮払法人税等という資産が残っています。この場合は確定した法人税等の総額から仮払分を差し引いた残りが未払いになります。
- 確定した法人税等が120,000円、仮払法人税等が50,000円の場合
- (借方)法人税等 120,000 /(貸方)仮払法人税等 50,000・未払法人税等 70,000
精算表では、法人税等が損益計算書欄の借方、未払法人税等が貸借対照表欄の貸方に載り、仮払法人税等の行は貸方で消えて右の欄がゼロになります。残高試算表欄に仮払法人税等があるのに気づかず全額を未払いにしてしまうミスが定番なので、必ず表を上から確認してください。
消費税 — 仮払と仮受を相殺する
消費税は税抜方式で処理します。期中は、支払った消費税を仮払消費税(資産)、受け取った消費税を仮受消費税(負債)として別々に積み上げています。決算ではこの2つを相殺し、差額を納付すべき金額として確定させます。
仕訳は「(借方)仮受消費税/(貸方)仮払消費税・未払消費税」。たとえば仮受消費税が180,000円、仮払消費税が120,000円なら、差額の60,000円が未払消費税です。精算表上では仮払・仮受の両方の行が消え、未払消費税だけが貸借対照表欄の貸方に残ります。損益計算書欄には何も載らない点が法人税等との違いです。仮払のほうが大きい場合は差額が未収還付消費税(資産)になりますが、3級ではまれです。
当座借越 — 貸方残高の当座預金を負債に振り替える
当座預金が貸方残高になっている場合、それは実質的に銀行からの一時的な借入です。決算では資産のマイナスのままにせず、負債に振り替えます。
仕訳は「(借方)当座預金/(貸方)当座借越」または「(貸方)借入金」。どちらの科目を使うかは問題文の指示か、精算表に用意されている行を見て判断します。精算表では、残高試算表欄の貸方にあった当座預金が修正記入の借方で消え、当座借越の行が貸方に立ちます。
その他に出やすい調整
- 現金過不足の整理 — 期中に計上した現金過不足のうち原因が判明した分は該当科目へ、不明分は雑損または雑益へ振り替える
- 訂正仕訳 — 期中の誤処理を「誤った仕訳の逆仕訳+正しい仕訳」で修正する
- 貯蔵品への振替 — 未使用の郵便切手や収入印紙を、通信費・租税公課から貯蔵品(資産)へ振り替える
- 売上・仕入の未処理取引 — 決算日直前の取引が未記帳のまま残っているケース。まず通常の仕訳を切ってから、他の決算整理に反映する
これらはどれも第1問で出る仕訳と同じ形です。精算表の問題だからといって特別な処理を覚える必要はなく、日々の仕訳練習がそのまま第3問の得点力になります。
損益計算書欄・貸借対照表欄への振り分けと当期純利益の求め方
決算整理を修正記入欄に反映したら、いよいよ右側の2欄です。ここは損益と貸借の振り分けさえ間違えなければ機械作業で、精算表の仕上げにあたる部分。当期純利益の求め方までを一気に確認しましょう。
どの科目がどちらの欄に行くのか
振り分けの基準は勘定科目の5要素分類だけです。
| 要素 | 移す欄 | 書く側 | 代表的な科目 |
|---|---|---|---|
| 資産 | 貸借対照表欄 | 借方 | 現金・普通預金・売掛金・繰越商品・備品・前払保険料 |
| 負債 | 貸借対照表欄 | 貸方 | 買掛金・借入金・未払法人税等・未払消費税・当座借越 |
| 純資産 | 貸借対照表欄 | 貸方 | 資本金・繰越利益剰余金 |
| 収益 | 損益計算書欄 | 貸方 | 売上・受取手数料・受取利息・雑益 |
| 費用 | 損益計算書欄 | 借方 | 仕入・給料・支払家賃・保険料・減価償却費・貸倒引当金繰入・法人税等 |
迷いやすいのが、貸倒引当金と減価償却累計額です。この2つは資産のマイナスを表しますが、貸借対照表欄の貸方に書きます。損益計算書欄に入れてしまう誤りが非常に多いので注意してください。貸借対照表そのものの構造を確認したい場合は貸借対照表の読み方も参考になります。
当期純利益の求め方 — 2通りで検算できる
すべての行を右へ移したら、損益計算書欄と貸借対照表欄をそれぞれ縦に合計します。このとき、どちらの欄も借方合計と貸方合計が一致しません。そのズレこそが当期純利益です。
損益計算書欄で見ると、収益(貸方)のほうが費用(借方)より大きければ利益が出ています。差額を借方に書き足すことで左右が一致します。「利益なのに借方?」と戸惑いますが、貸方が大きい分を借方で埋めて合わせると考えれば納得できるはずです。
そして貸借対照表欄でも同じ差額が出ます。こちらは資産(借方)のほうが負債・純資産(貸方)より大きくなるので、差額を貸方に書き足します。
| 欄 | 当期純利益を書く側 | 意味 |
|---|---|---|
| 損益計算書欄 | 借方 | 収益 − 費用 の差額 |
| 貸借対照表欄 | 貸方 | 資産 −(負債+純資産)の差額 |
ここが精算表の最大の検算ポイントです。損益計算書欄で求めた当期純利益と、貸借対照表欄で求めた当期純利益は必ず同じ金額になります。一致しなければ、どこかに転記ミスか計算ミスがあるという確実なサインです。当期純損失(赤字)の場合は、書く側が両欄とも逆になります。
当期純利益と繰越利益剰余金の関係
精算表の貸借対照表欄には繰越利益剰余金の行があり、そこには決算整理前の残高がそのまま載ります。当期純利益を足し込む必要はありません。利益を繰越利益剰余金に振り替えるのは、精算表を作ったあとに行う決算振替仕訳の仕事だからです。
実際の貸借対照表を作るときは、繰越利益剰余金の期首残高に当期純利益を加算した金額が計上されます。精算表と財務諸表で繰越利益剰余金の金額が違うのはこのためで、混乱しやすいところなので区別しておきましょう。精算表の段階では当期純利益は独立した行として一番下に置かれる、と覚えておけば十分です。
損益計算書と貸借対照表を直接作る問題との違い
第3問で財務諸表の作成が出た場合、やることは精算表とほぼ同じです。決算整理仕訳を切り、整理後の金額を求めるところまでは完全に共通しています。違いは書く場所と表示上の名称で、たとえば仕入は損益計算書上では「売上原価」、売上は「売上高」と表示されます。また損益計算書では売上総利益や当期純利益を段階的に計算する様式になります。精算表が解ければ財務諸表も解けるので、対策を分ける必要はありません。
精算表が合わない・わからないときのチェックリスト
練習で精算表が合わないとき、闇雲に全部を見直すと時間がいくらあっても足りません。ズレには原因のパターンがあり、金額を見れば当たりをつけられます。精算表が苦手・難しいと感じている人ほど、この探し方を知っておく価値があります。
まずズレた金額から原因を推測する
借方合計と貸方合計の差額を計算し、その数字の特徴を見てください。
| 差額の特徴 | 疑うべき原因 |
|---|---|
| ある1つの金額とぴったり同じ | その金額の転記漏れ、または右の欄へ移し忘れ |
| ある金額のちょうど2倍 | 借方と貸方を逆に書いている |
| 9で割り切れる | 桁の書き間違い、または数字の入れ替え(52,000を25,000など) |
| 当期純利益の行だけ合わない | 集計ミス。損益計算書欄と貸借対照表欄の利益を突き合わせる |
差額と同じ金額が表のどこかにないかを探す——これだけで原因の半分は見つかります。
手戻りを最小にする確認の順番
それでも見つからないときは、次の順で確認します。上から順にやることが重要で、下流から探しても原因にはたどり着けません。
- 修正記入欄の借方合計=貸方合計を確認する — ここが合わないなら決算整理仕訳か転記のミス。右側を見る意味はない
- 決算整理事項の数と、表に反映した項目の数が一致しているか数える — 単純な処理漏れが意外に多い
- 横の足し引きを1行ずつ確認する — 「同じ側なら足す、反対側なら引く」を守れているか
- 移し先の欄が正しいか確認する — 特に貸倒引当金・減価償却累計額・前払費用の行
- 縦の合計を検算する — 単なる電卓の打ち間違いも珍しくない
「わからない」の正体はたいてい仕訳
精算表がわからないという相談の大半は、実は表の仕組みではなく決算整理仕訳が分かっていないケースです。精算表は仕訳の結果を並べただけの表なので、仕訳が書けなければ絶対に埋まりません。表の書き方を何度練習しても点が伸びない人は、いったん精算表から離れて、決算整理仕訳だけを単独で20問ほど繰り返すほうが近道です。
逆に、仕訳は書けるのに表で崩れる人は、横の足し引きのルールが定着していないだけです。この場合は決算整理事項が2〜3項目しかない小さな精算表で、最後まで完成させる経験を数回積めば解消します。自分がどちらのタイプかを見極めることが、遠回りを避ける最短ルートです。
難しいと感じるのは最初だけ
精算表が難しいと言われるのは、覚えることが多いからではなく、複数の論点が同時に問われるからです。売上原価・貸倒引当金・減価償却・経過勘定が1つの表に同居し、どれか1つを落とすと合計が合わない。この「同時進行」の負荷が難易度の正体です。
裏を返せば、個々の処理はどれも第1問レベルの仕訳にすぎません。1項目ずつ潰していけば必ず解けるようになります。試験全体の難易度感は簿記3級の難易度で扱っているので、学習計画を立てるときの参考にしてください。
推定問題(穴埋め・推定精算表)の解き方
通常の精算表は「残高試算表+決算整理事項」から右へ向かって埋めていきます。これに対して、完成した精算表の一部を空欄にして、そこから逆算させるのが推定問題です。穴埋め形式とも呼ばれ、慣れていないと手が止まりますが、考え方は難しくありません。
推定問題とは何か
推定問題では、精算表のあちこちが虫食いになっています。決算整理事項が与えられないこともあり、埋まっている数字だけを手がかりに空欄を復元します。問われているのは精算表の各欄がどう繋がっているかを本当に理解しているかという一点です。丸暗記で解いてきた人はここで崩れます。
裏を返せば、これまでの章で確認した「横の足し引き」と「縦の合計」の2つの関係だけで、すべての空欄は埋められます。新しい知識は要りません。
使える手がかりは3つだけ
- 横の関係 — 残高試算表 ± 修正記入 = 損益計算書または貸借対照表。3つのうち2つが分かれば残り1つが決まる
- 修正記入欄の貸借一致 — 借方合計と貸方合計が同額。片方の空欄は差額で求まる
- 当期純利益の一致 — 損益計算書欄と貸借対照表欄で同額。片方から求めてもう片方の集計に使える
この3つを状況に応じて使い分けます。
推定の解き方 — 埋まっている行から攻める
手順としては、いきなり空欄の多い行に手を出さないのが鉄則です。
- 横に3つのうち2つが埋まっている行を探し、残り1つを計算する。これを繰り返して埋められる行を全部埋める
- 科目名から決算整理の内容を推測する。たとえば「前払保険料」の行があれば経過勘定の処理が、「減価償却累計額」の修正記入があれば減価償却が行われたと分かる
- 推測した決算整理仕訳の相手科目をたどる。前払保険料が借方にあるなら、同額が保険料の行の貸方にある
- それでも埋まらない箇所は、修正記入欄や各欄の合計から差額で求める
特に有効なのが2と3です。決算整理は必ず2つの勘定科目がペアで動くため、片方が見えていればもう片方の金額と方向は確定します。繰越商品の行に修正記入が2つ入っていれば売上原価の算定、貸倒引当金繰入の行があれば差額補充法——というように、科目名は決算整理の種類を教えてくれる手がかりです。
推定問題は「精算表を理解したか」のテスト
推定問題を自力で解けたなら、精算表の仕組みは完全に理解できていると考えて構いません。逆に解けない場合は、どの関係(横・貸借一致・利益一致)を使い損ねたのかを振り返ってください。手順を覚え直すのではなく、関係の使い方を確認するのが復習の正しいやり方です。
なお推定問題は第3問より第2問(勘定記入)で問われることも多い形式です。第2問の対策は簿記3級の第2問のガイドで詳しく扱っています。
時間配分と早く解くコツ・覚え方
知識があっても時間内に解ききれなければ点になりません。試験時間は60分しかなく、第3問に使えるのは実質20〜25分です。日商簿記3級を受けるうえで、精算表を早く解くコツを整理しておきましょう。
60分の時間配分
まず全体の配分を決めておきます。目安は次のとおりです。
| 大問 | 時間の目安 | 方針 |
|---|---|---|
| 第1問(仕訳15問) | 15〜20分 | 1問1分ペース。ここは速度勝負 |
| 第2問 | 10〜15分 | 粘りすぎない。分からない設問は飛ばす |
| 第3問(精算表) | 20〜25分 | 最も時間を要する。残り時間を注ぐ |
| 見直し | 5分 | 第1問の科目選択ミスを優先して確認 |
解く順番は第1問 → 第3問 → 第2問を推奨します。配点が大きく時間のかかる第3問を、集中力と残り時間に余裕がある段階で処理するためです。第2問は出題の幅が広く時間が読めないので、最後に回すほうが事故が起きにくくなります。
早く解くコツ5つ
- 決算整理事項を先に全部読んでから書き始める — 途中で「あ、これも関係する」と戻る往復がなくなる
- 計算用紙に仕訳を縦に並べて書く — 借方・貸方を揃えて書くと転記が速く、貸借の検算もその場でできる
- 決算整理に関係ない行を先に右へ流す — 頭を使わない作業なので、思考が温まっていない序盤に片付ける
- 電卓は片手・ペンは持ったまま — 持ち替える動作が積み重なると数分の差になる
- 1項目で2分以上悩んだら飛ばす — 部分点方式なので、1項目に固執して他を落とすのが最悪の結果
ネット試験では、これに画面操作の速度が加わります。金額入力の際にカンマは自動で入るため打つ必要がなく、Tabキーで次の欄へ移動できます。マウスでいちいちセルをクリックしていると想像以上に時間を食うので、模擬試験プログラムで一度確かめておきましょう。ネット試験特有のコツは簿記3級の模擬試験で本番形式に慣れておくのが確実です。
覚え方のコツ — 語呂より「流れ」で覚える
決算整理の覚え方として、まず頻出項目を語呂で押さえるのは有効です。「しいくり くりしい」(売上原価)のほか、決算整理の主要項目を「うり・かし・げん・けい」(売上原価・貸倒引当金・減価償却・経過勘定)とまとめて記憶すると、問題を読む前に何が出るかの構えができます。
ただし語呂はきっかけにすぎません。本当に定着するのは、「なぜその処理が必要か」を1行で説明できる状態です。
- 売上原価
- 売れ残りは費用にできないから、仕入から抜く
- 貸倒引当金
- 来期の貸倒れは今期の売上のせいだから、今期の費用にする
- 減価償却
- 使った分だけ価値が減るから、その分を費用にする
- 経過勘定
- 払った時期と使う時期がずれているから、当期の分だけに直す
この4行が言えるようになれば、初見の決算整理事項でも「これは何を直そうとしているのか」から仕訳を組み立てられます。攻略の本質は暗記量ではなく、理由から手が動く状態を作ることです。
練習問題・テンプレート・教材(PDF・エクセル・アプリ・動画)
精算表は読んで理解するだけでは絶対に解けるようになりません。手を動かした回数がそのまま得点になる論点です。ここでは練習問題や解説教材の入手先を、形式別に整理します。
無料で使える練習問題・例題の入手先
| 種類 | 内容 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 商工会議所の公式サンプル問題 | ネット試験の出題イメージを示す公式問題。PDFで公開 | 本番の形式を最初に確認するとき |
| 無料学習サイト | CPAラーニング、いぬぼきなど。解説付きの練習問題を公開 | 論点別に例題を数多くこなしたいとき |
| 予備校の無料模試 | ネットスクールや各校が公開する模擬問題 | 本番同様の総合問題で通し練習するとき |
| 市販問題集 | 解説の詳しさと問題数が段違い | 本気で仕上げる段階のメイン教材 |
無料素材の詳しい入手先は簿記3級の過去問を無料で解く方法にまとめています。なお公開されている問題や解答の内容・公開状況は変わることがあるため、利用前に各サイトの最新情報を確認してください。
PDFのダウンロードと印刷 — 紙で解く価値
練習問題のPDFをダウンロードして印刷し、紙で解く方法は今も有効です。統一試験を受ける人はもちろん、ネット試験を受ける人にとっても紙で全体を見渡しながら解く経験は、表の構造を理解するのに役立ちます。
PDFで配布されている問題は、解答用紙だけを繰り返し印刷して使えるのが利点です。同じ問題を3回解き直すとき、1回目の書き込みが残っていると答えを思い出してしまうため、白紙の解答用紙を用意できる形式は復習に向いています。
テンプレート・エクセルで自作する
精算表のテンプレートを自分で作るのも、実は理解を深める有効な手段です。エクセルで8列の表を組み、横の足し引きと縦の合計に数式を入れてみてください。数式を組む過程で、どの欄がどう繋がっているかを強制的に考えることになるため、推定問題への耐性がつきます。
ただし試験対策としては、エクセルでの作成に時間をかけすぎないでください。本番は手計算と電卓です。テンプレートはあくまで理解の補助と割り切り、演習は手書きか本番形式で行うのが原則です。
動画とアプリ — 解説を聞く/反復する
教材は目的別に使い分けます。
- YouTubeの解説動画
- ふくしままさゆき氏のチャンネルをはじめ、精算表の解き方を通しで解説する動画が多数公開されています。読んでも腑に落ちない箇所を、手の動きごと見られるのが強みです。まずは動画で全体像をつかみ、そのあと自力で解く流れが効率的です。
- 学習アプリ
- アプリの得意分野は、決算整理仕訳のような短い単位の反復です。精算表そのものを解くには画面が小さいものの、土台となる仕訳を通勤時間などに繰り返せるため、机に向かう時間を総合問題に回せます。
- 問題集
- 解説の質と網羅性で選びます。予想問題集は本番より難しく作られていることが多いので、点が取れなくても落ち込む必要はありません。
演習の回し方
おすすめは次のサイクルです。
- 決算整理仕訳だけを単独で反復し、迷わず書ける状態にする
- 決算整理が3〜4項目の小さめの精算表を、完成させることを目標に解く
- 本番相当の総合問題を時間を計って解く(20〜25分)
- 間違えた項目を仕訳レベルまで戻して確認し、同じ問題を数日後に解き直す
解きっぱなしにせず、間違いを仕訳まで戻すのが最も重要です。精算表のミスは必ず特定の決算整理に紐づいており、そこを潰さない限り何度でも同じ失点を繰り返します。
まとめ — 精算表は「仕訳 × 横の足し引き」で必ず解ける
簿記3級の精算表は、見た目の複雑さに反して、やっていることは終始一貫しています。要点をもう一度整理します。
- 精算表は決算の下書き — 残高試算表・修正記入・損益計算書・貸借対照表の4欄8列で、決算整理前から財務諸表までを1枚で表す
- 第3問で35点 — 精算表・財務諸表・決算整理後残高試算表の3形式のいずれかが出る。ネット試験でも精算表は出題範囲に含まれる
- 採点は解答欄ごとの積み上げ — 完成しなくても部分点が入る。簡単な項目から確実に処理する
- 解く順番は固定 — 決算整理仕訳を書き出す → 修正記入欄へ転記 → 貸借一致を検算 → 横に足し引きして右へ → 縦に集計して当期純利益
- 横の足し引きは「同じ側なら足す、反対側なら引く」 — これ1つで全行を処理できる
- 当期純利益は2つの欄で一致する — 損益計算書欄は借方、貸借対照表欄は貸方。一致しなければどこかにミスがある
- 合わないときは修正記入欄から確認する — 差額と同じ金額を表の中に探すと原因が早く見つかる
そして最も大切な結論は、精算表の失点はほぼすべて決算整理仕訳の失点だということです。売上原価・貸倒引当金・減価償却・経過勘定・法人税等・消費税——この6つを迷わず仕訳できるようになれば、表を埋める作業は算数にすぎません。逆に仕訳が曖昧なままでは、精算表の解き方を何度読んでも点は伸びません。
だからこそ、精算表対策の中心に置くべきは仕訳の反復です。Love.Accountants の仕訳ドリルは、本番と同じ「勘定科目を選んで金額を入力する」形式で出題され、間違えた問題は忘れかけたタイミングで自動的に再出題されます。決算整理の論点だけを集中的に回せるので、第3問で崩れなくなるまでの距離が一気に縮まります。1問30秒から始められるので、まずは今日、繰越商品と仕入の振替を10問解いてみてください。
2026年度に施行される試験には2022年度適用の出題区分表が適用されますが、2027年4月1日以降の試験からは新しい出題区分表が適用され、手形の削除など3級の範囲にも変更が入ります。受験する時期によって範囲が変わるため、教材を買う前に商工会議所の公式サイトで最新の出題区分表と試験情報を確認してください。
