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総勘定元帳とは?読み方・書き方から仕訳帳との違い・転記のやり方・エクセルテンプレート・保存期間まで完全ガイド

最終更新日:
総勘定元帳は、仕訳帳に記録した取引を勘定科目ごとに集計する主要簿です。読み方・書き方・仕訳帳との違い・転記の手順・標準式と残高式の様式・エクセルテンプレートや会計ソフトでの出力・法人7年/個人7年の保存期間・青色申告での扱い・簿記3級の勘定記入問題まで、この1本でまとめて解説します。
目次

総勘定元帳とは?読み方・意味・何がわかる帳簿かをわかりやすく解説

総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)とは、日々の取引を勘定科目ごとに集計する帳簿です。よみかたは「そうかんじょうもとちょう」です。別名として「元帳(もとちょう)」と短く呼ばれたり、略称の「G/L」が使われたりします。仕訳帳と並ぶ主要簿の1つで、簿記や経理の実務では作成が事実上必須の帳簿です。「勘定総元帳」「総勘定元帐」と表記されたり、ローマ字で「総勘定元帳toha」と検索されたりすることもありますが、いずれも同じ帳簿を指しています。

意味 — 取引を「科目という引き出し」に仕分けし直す帳簿

複式簿記では、1つの取引をまず仕訳帳に日付順で記録します。ただし日付順のままでは「現金は今いくら残っているのか」「売上は今期いくら積み上がったのか」が分かりません。そこで、仕訳帳の記録を現金・売上・仕入といった勘定科目という引き出しに入れ直すのが総勘定元帳です。総勘定元帳の中身は、勘定科目の数だけ用意された「勘定口座(かんじょうこうざ)」の集まりで、1科目につき1ページ(または1シート)を割り当てて、その科目に関係する取引だけを時系列に並べます。

「総勘定」という言葉のイメージがつかみにくいときは、「すべての勘定(科目)を集めた元帳」と読み替えると分かりやすくなります。英語では General Ledger と呼び、これが「GL」という略語の由来です。複式簿記の仕組みそのものについては、別の記事で基礎から解説しています。

何がわかる?総勘定元帳の目的と役割

総勘定元帳をいつ使うのか、そして何を書く帳簿なのか。作る目的と必要性(なんのため・なぜ必要か)は、大きく3つあります。この3つが、総勘定元帳を作らないと得られない情報です。

  • 科目ごとの残高がわかる — 現金の残高、売掛金の未回収額、借入金の残債など、「今いくらか」が科目単位で即座にわかります。
  • 科目ごとの発生額がわかる — 今期の売上高はいくらか、水道光熱費を何に使ったか、といった集計が科目単位でできます。これがそのまま決算書の数字になります。
  • 取引の履歴を追える — 「この売掛金はいつの売上か」「この経費の相手は誰か」を、摘要欄から1件ずつ遡れます。税務調査で最初に見られる帳簿でもあります。

つまり総勘定元帳は、決算書(貸借対照表・損益計算書)を作るための材料そのものです。決算書は総勘定元帳の各科目の残高を並べ替えて作るので、総勘定元帳が正しくなければ決算書も正しくなりません。何に使う帳簿かと聞かれたら、「決算書の元データであり、取引履歴の検索台帳」と答えるのが実務の感覚に最も近い説明です。

法定帳簿としての位置づけ — 作成は義務か

総勘定元帳は、法人税法・所得税法が保存を求める国税関係帳簿に含まれます。法人であれば法人税法上の帳簿として、個人事業主であれば青色申告(複式簿記)の記帳の一部として、作成と保存が求められます。作成義務があるかどうかは事業形態と申告方式で決まる、と整理しておくとわかりやすくなります。単式簿記(簡易な記帳)だけで済ませている白色申告や10万円控除の青色申告では、総勘定元帳の形をとらない帳簿でも認められる場合がありますが、その場合も収入金額や必要経費を記載した法定帳簿の備付けは必要です。詳しくは後半の「個人事業主・フリーランスの総勘定元帳」の章で整理します。

総勘定元帳を作るメリット

義務だから作る、という以上のメリットもあります。月次で科目残高が見えるようになると、売上の増減や経費の膨らみにその月のうちに気づけるようになります。銀行から融資を受けるときも、決算書だけでなく総勘定元帳の提示を求められることがあり、科目の内訳をすぐ説明できる状態は与信の面でも有利に働きます。簿記の学習という観点では、総勘定元帳の記帳を一度自分の手で通すと、仕訳が最終的にどこへ流れ着くのかという簿記一巡のイメージが一気にはっきりします。

総勘定元帳と仕訳帳の違い — 主要簿2冊の役割分担

総勘定元帳を調べる人が最初につまずくのが、仕訳帳との違いです。結論から言うと、2つは対立するものではなく、同じ取引を「時間順」と「科目順」の2つの切り口で並べた帳簿です。どちらか一方を選ぶものではなく、複式簿記では両方そろって初めて機能します。この2冊をまとめて主要簿と呼びます。

並び順が違う — 日付順の仕訳帳、科目順の総勘定元帳

比較項目仕訳帳(仕訳日記帳)総勘定元帳(元帳)
並び順取引が起きた日付順勘定科目ごと、その中で日付順
1行の意味1つの取引(借方と貸方の両方)1つの科目に生じた増減の1件
わかることいつ何が起きたか科目ごとの発生額と残高
次に使う先総勘定元帳へ転記する試算表・決算書を作る

仕訳帳は「取引の入口」です。取引が発生した順に、借方と貸方を1組ずつ書き留めていきます。総勘定元帳は「取引の出口」で、仕訳帳に書いた1つの仕訳を借方側と貸方側に分解し、それぞれの科目のページへ振り分けます。この振り分け作業を転記と呼びます。総勘定元帳の次に作るのは試算表で、そこから決算書へと進みます。

「仕訳日記帳」「仕訳長」「仕訳表」との違いは?

会計ソフトによっては、仕訳帳のことを仕訳日記帳という名前で呼びます。仕訳日記帳と仕訳帳の違いを気にする必要はほとんどなく、実質的に同じものと考えて差し支えありません。「仕訳長」「仕訳表」と表記されることもありますが、これらは仕訳帳の誤記または俗称です。仕分けと書かれることもありますが、簿記では「仕訳」が正しい表記です。仕訳そのものの書き方は簿記3級の仕訳の記事で例題つきで解説しています。

どっちを先に作る? 総勘定元帳だけではダメな理由

順序は必ず仕訳帳が先、総勘定元帳が後です。仕訳帳を飛ばして総勘定元帳だけを作ると、借方と貸方の対応関係が記録として残らず、金額の入力ミスを検算する手段がなくなります。逆に仕訳帳だけでも決算書は作れません。総勘定元帳がないと科目ごとの集計ができないためです。会計ソフトを使う場合は、仕訳を1回入力すれば両方が自動生成されるので、この順序を意識する場面は転記ミスを追いかけるときに限られます。

なお、総勘定元帳では借方と貸方が仕訳と反対側に見えることがあります。これは記入する側が入れ替わっているのではなく、相手科目を表示しているためです。詳しくは「相手科目と諸口」の章で扱います。

補助簿・補助元帳との違いと帳簿の種類

帳簿は大きく主要簿補助簿の2種類に分かれます。主要簿は仕訳帳と総勘定元帳の2つだけ。それ以外の帳簿はすべて補助簿で、主要簿だけでは足りない明細を補う役割を持ちます。帳簿の種類は何種類あるかと聞かれると数え方によって変わりますが、この2つの分け方さえ押さえれば全体像を見失いません。

補助元帳(補助簿)とは — 総勘定元帳の1科目を分解したもの

補助元帳とは、総勘定元帳の1つの勘定口座を取引先別・物件別にさらに細かく分けた元帳です。たとえば総勘定元帳の売掛金は「売掛金 合計 500万円」としか分かりませんが、補助元帳である売掛金元帳(得意先元帳)を見れば「A社 200万円、B社 300万円」と内訳がわかります。補助元帳と総勘定元帳の違いは、粒度の違いだと理解してください。補助元帳の各社の合計は、必ず総勘定元帳の売掛金残高と一致します。

帳簿区分役割
仕訳帳(仕訳日記帳)主要簿全取引を日付順に記録する
総勘定元帳主要簿全取引を勘定科目ごとに集計する
売掛金元帳(得意先元帳)補助元帳売掛金を取引先ごとに分解する
買掛金元帳(仕入先元帳)補助元帳買掛金を仕入先ごとに分解する
商品有高帳補助元帳商品の数量と単価の増減を追う
固定資産台帳補助元帳資産1件ごとの取得価額と減価償却を管理する
現金出納帳・預金出納帳補助記入帳現金・預金の入出金だけを時系列で追う
売上帳・仕入帳・経費帳補助記入帳売上・仕入・経費の明細だけを記録する

出納帳・売上台帳・経費帳との違い

現金出納帳との違いは、対象範囲です。現金出納帳(金銭出納帳)は現金の入出金だけ、預金出納帳は預金の動きだけを追う帳簿で、総勘定元帳の現金勘定・預金勘定とほぼ同じ内容を、より入出金台帳に近い形で書いたものです。売上台帳(売上帳)や経費帳も同様に、売上・経費という1つの側面だけを抜き出した帳簿です。これらの補助簿は総勘定元帳の代わりにはなりません。補助簿はいずれも一部の科目しか映さないのに対し、総勘定元帳はすべての科目を網羅するという点が決定的な違いです。

日計表は、1日分の仕訳を科目ごとに集計した集計表で、日次で総勘定元帳へまとめて転記するときの中継に使います。日計表との違いも、対象期間が1日に限られる点にあります。伝票会計を採用している場合は、仕訳帳の代わりに入金伝票・出金伝票・振替伝票を起票し、そこから総勘定元帳へ転記します。

総勘定元帳だけあれば足りるのか

法律上の最低ラインで言えば、主要簿である仕訳帳と総勘定元帳があれば複式簿記の要件は満たせます。ただし実務では、売掛金買掛金の取引先が複数ある時点で補助元帳がないと回収・支払の管理ができません。会計ソフトを使うなら、補助科目を設定しておけば補助元帳は自動で作られるので、手間はほぼ増えません。勘定口座との違いを整理しておくと、勘定口座は総勘定元帳を構成する1科目分のページのことで、帳簿そのものの名前ではありません。

総勘定元帳の様式 — 標準式・残高式・略式(T字型)と記載事項

総勘定元帳の様式(フォーマット)は大きく2種類あります。標準式残高式です。どちらで作っても構いませんが、実務で使われているのは圧倒的に残高式で、市販の帳簿用紙や会計ソフトの出力もほぼ残高式です。簿記の試験では標準式を簡略化したT字型(略式)が使われます。レイアウトが違うだけで、記録している内容そのものは同じです。

標準式 — 借方と貸方を左右に並べる

標準式は、ページの中央で左右に分け、左半分に借方の記入、右半分に貸方の記入を並べる様式です。左右それぞれに日付・摘要・仕丁(元丁)・金額の欄を持つため、左右対称の見た目になります。書き方は、借方に記入すべき取引は左半分の次の空き行へ、貸方に記入すべき取引は右半分の次の空き行へ、というように独立して行を進めます。左右で行数がそろわないのが普通です。

残高式 — 1行に借方・貸方・残高を並べる

残高式は、1行の中に借方・貸方・残高を横並びにする様式です。書き方は取引の発生順に上から1行ずつ書き足していくだけで、行ごとにその時点の残高が出るのが最大の利点です。残高欄の隣には「借/貸」という欄があり、残高が借方側にあるのか貸方側にあるのかを「借」「貸」の1文字で示します。この欄は借または貸欄、あるいは貸借欄と呼ばれます。現金や売掛金のような資産科目は通常「借」、買掛金や借入金のような負債科目は通常「貸」になります。

標準式と残高式で欄の並びがどう違うかの比較 標準式:借方と貸方を左右に分ける 日付 摘要 仕丁 借方 日付 摘要 仕丁 貸方 残高式:1行に借方・貸方・残高を並べる 日付 摘要 仕丁 借方 貸方 借/貸 残高 残高式は行ごとに残高が出るので実務ではこちらが主流
標準式は借方・貸方を左右に分け、残高式は1行に借方・貸方・残高を並べる

略式(T字型) — 簿記の試験で使う簡略フォーム

略式は、標準式から日付・摘要・仕丁の欄を落とし、勘定科目名と借方・貸方の金額欄だけを残した形です。形がアルファベットのTに似ているのでT字型・Tフォームとも呼ばれます。書き方は、科目名を上に書き、横線の下を縦線で左右に割って、左に借方、右に貸方の金額を書き並べるだけです。簿記の答案用紙や下書きで使われるのはほぼこの略式で、手早く残高を出したいときの計算用紙としても便利です。

総勘定元帳の記載事項 — 必要項目のチェックリスト

様式が自由でも、記載事項(記載要件)として押さえるべき項目は決まっています。次の項目が欠けていると、帳簿としての要件を満たさない可能性があります。

勘定科目名
そのページがどの科目の口座かを示す。ページ上部に書く。
日付
取引が発生した年月日。年は各ページの最初と年が変わるときだけ書けば足りる。
摘要
相手科目と、取引内容がわかる簡潔なメモ。
仕丁(または元丁)
転記元の仕訳帳のページ番号。相互の参照に使う。
借方金額・貸方金額
その取引でこの科目に生じた増減額。単位は円で、原則として消費税込みか税抜きかを会社として統一する。
残高と借/貸
残高式の場合。その時点の残高と、それが借方・貸方どちらにあるか。

雛形(ひな形)や見本、記入済みのサンプルを手元に置いて書き始めたい場合は、市販の帳簿用紙を1冊買うか、次章以降で紹介するエクセルのテンプレートを使うのが早道です。記入例・記載例は、この後の書き方と転記の章で実際の数字を使って示します。

総勘定元帳の書き方 — 日付・摘要・元丁・借方貸方の記入方法と訂正のルール

ここからは実際の記入方法(書き方・やり方)を欄ごとに見ていきます。帳簿のつけ方でつまずくポイントは、ほぼすべてこの欄の意味を取り違えることから起きます。作成の手順そのものはシンプルで、仕訳を1件ずつ、該当する科目のページの空き行に書き写していくだけです。

日付欄 — 転記した日ではなく取引が起きた日

日付は取引が発生した日を書きます。転記の作業をした日ではありません。ページの1行目には年・月・日をすべて書き、2行目以降は月が変わるときだけ月を書き、同月内は日だけを書くのが一般的なルールです。手書きの帳簿では、月欄と日欄が縦線で区切られているので、その区切りに従って書きます。

摘要欄 — 相手科目を書くのが原則

摘要欄には、その取引の相手科目を書きます。取引内容を文章で書く欄だと思われがちですが、簿記の原則としては相手科目を書く欄です。実務では相手科目に加えて「A社 4月分」「電気代 3月分」のように取引先や内容を短く添えると、後から検索するときに役立ちます。摘要欄に何を書くか、その付け方に迷ったら、この行だけを見て元の仕訳を復元できるかを基準にすると判断しやすくなります。

仕丁・元丁欄 — 帳簿どうしを行き来するための番号

仕丁(しちょう)欄には、転記元である仕訳帳のページ番号を書きます。逆に仕訳帳側には元丁(もとちょう)欄があり、そこには転記先である総勘定元帳のページ番号を書きます。元丁とは、この総勘定元帳側の丁数のことです。丁数とは、和帳簿の時代から使われているページ番号の呼び名です。番号を入れておくと、総勘定元帳の1行から元の仕訳へ、仕訳から総勘定元帳の該当ページへ、双方向に一瞬で戻れます。会計ソフトでは伝票番号がこの役割を果たします。市販の帳簿用紙ではページ右上に丁数を書く欄があり、総勘定元帳No.として通し番号を振る運用もあります。

借方・貸方のどちら側に書くか — 左右のルール

金額を書く側は、元の仕訳と同じ側です。仕訳で借方に現金と書いたなら、現金勘定のページでは借方(左)に金額を書きます。仕訳の左は元帳でも左、仕訳の右は元帳でも右。これが借方貸方の原則で、例外はありません。「なぜ逆に見えるのか」と感じるのは、摘要欄に書かれる相手科目が反対側の科目だからです。金額の位置と摘要の科目名は別物だと切り分けて読んでください。

5要素と左右の関係は次のとおりです。資産・費用は増えたら借方(左)、負債・純資産・収益は増えたら貸方(右)に記入します。減ったときはその反対側です。

訂正の書き方 — 2重線・赤ペン・チェックマーク

帳簿は改ざん防止のため、修正液や消えるペンでの書き直しは認められません。誤りを見つけたら、間違えた箇所に2重線を引き、その上または横に正しい内容を書きます。手書きの帳簿では2重線と訂正印を使うのが慣行です。会計ソフトでも、訂正履歴が残る形で修正するのが電子帳簿保存法の考え方に沿います。

  • 2重線 — 誤記を消さずに残す。線を引いた下の文字が読めることが条件。
  • 赤ペン(赤字) — 締切線や合計行、訂正の注記に使う。金額そのものを赤字で書くと「マイナス」の意味で使われることがあるため、社内でルールを統一する。
  • チェックマーク — 残高照合が済んだ行に付ける印。どこまで確認したかを可視化する。
  • 締切線 — 月末や期末で区切るときに引く線。単線と2重線を使い分ける。

手書きでもソフトでも、間違いに気づいたときに元の記録を消さずに直すという点は共通です。この原則を守っていれば、後から見返したときに「なぜこの数字になったのか」を必ず追跡できます。

相手科目と諸口 — なぜ相手科目を書くのか・複合仕訳の書き方

総勘定元帳の摘要欄でつまずくのが、相手科目と諸口です。この2つの意味がわかると、元帳の1行から元の仕訳が読めるようになります。

相手科目とは — 仕訳のもう一方の科目

相手科目(相手勘定・相手勘定科目)とは、その仕訳で反対側に立っている科目のことです。「商品100円を現金で仕入れた」という取引なら、仕訳は借方が仕入100・貸方が現金100です。この仕訳を転記すると、仕入勘定のページには借方100と書き、摘要欄には相手科目である「現金」と書きます。同時に現金勘定のページには貸方100と書き、摘要欄には相手科目である「仕入」と書きます。

なぜ相手科目を書くのか。理由は、金額だけでは元の取引が復元できないからです。現金勘定に「貸方100」とだけ書いてあっても、何に使った100円かはわかりません。摘要に「仕入」とあれば、仕入代金として出ていった100円だと1行で判別できます。相手科目は、勘定科目ごとにバラバラにされた記録を、元の1つの取引へ戻すための糸です。総勘定元帳を見て「借方と貸方が反対に書かれている」と感じるのは、金額の位置ではなく摘要欄の科目名を見ているためで、記入自体が逆になっているわけではありません。

諸口とは — 相手科目が複数あるときの記号

諸口(しょくち)とは、相手科目が2つ以上あるときに、それらをまとめて指す言葉です。摘要欄は1行に1つの科目名しか書けないため、相手が複数ある複合仕訳では個別の科目名を書ききれません。そこで「諸口」と書いて、「相手は複数あるので仕訳帳を見てほしい」という合図にします。諸口の使い方は非常に単純で、相手が1つなら科目名、2つ以上なら諸口と覚えるだけです。

たとえば「商品300円を仕入れ、100円は現金で払い、200円は掛けにした」という取引の仕訳は、借方が仕入300、貸方が現金100と買掛金200です。この場合、仕入勘定の摘要欄は相手が2つあるので諸口と書きます。一方、現金勘定と買掛金勘定はそれぞれ相手が仕入1つだけなので、摘要欄には「仕入」と書きます。諸口になるのは、相手が複数ある側の科目だけという点が、書き方でよく間違えるポイントです。

転記先の勘定金額と側摘要欄
仕入借方 300諸口(相手が現金と買掛金の2つ)
現金貸方 100仕入
買掛金貸方 200仕入

会計ソフトの「複合」も同じ意味

会計ソフトでは、諸口のことを複合と表示する製品があります。複合とは、相手科目が複数あるために1つに特定できない状態を指す表示で、意味は諸口と同じです。仕訳の入力画面で借方または貸方に複数行を入れると、元帳側の摘要が自動的に諸口(複合)になります。

M&Aで生じるのれんのように、1つの仕訳で多くの科目が動く取引では、元帳の摘要がのれん側から見て諸口になることがよくあります。摘要が諸口ばかりで内容がわからないときは、伝票番号や仕丁から仕訳帳へ戻って、複数の相手科目を確認するのが正しい読み方です。実務では、諸口になる行ほど摘要の空きスペースに取引内容のメモを添えておくと、後で調べる手間が大きく減ります。

仕訳帳から総勘定元帳への転記 — やり方と手順を記入例で

転記とは、仕訳帳に書いた仕訳を、勘定科目ごとのページへ書き写す作業です。総勘定元帳の作り方の中心はこの転記にあります。簿記の一巡の中でどこに位置する作業なのかを、まず全体像で確認しておきましょう。

取引から仕訳帳・総勘定元帳を経て決算書に至る簿記一巡の流れ 簿記一巡の流れ:総勘定元帳は決算書の手前にある 取引 仕訳帳 総勘定 元帳 試算表 決算書 仕訳 転記 集計 決算
取引→仕訳帳→総勘定元帳→試算表→決算書。総勘定元帳への転記は簿記一巡の中央にある

転記の仕方 — 4つの手順

転記のやり方は、仕訳1件につき次の4手順を繰り返すだけです。借方と貸方で2回に分けて書き写す点だけ意識してください。

  1. 仕訳の借方の科目を見て、総勘定元帳のその科目のページを開く。
  2. そのページの空き行に、日付・相手科目(摘要)・借方金額・仕丁を書く。
  3. 次に仕訳の貸方の科目のページを開き、同じ日付・相手科目・貸方金額・仕丁を書く。
  4. 仕訳帳の元丁欄に、書き込んだ総勘定元帳のページ番号を記入して往復の目印にする。

記入例 — 1つの仕訳が2つのページに分かれる

「4月1日、商品を売り上げて現金500円を受け取った」という取引で、実際の書き方を見てみます。仕訳は借方が現金500、貸方が売上500です。この1件が、現金勘定と売上勘定の2ページに分かれて書かれます。

1つの仕訳が現金勘定と売上勘定の2ページに分かれて転記される様子 仕訳 4/1 (借)現金 500 /(貸)売上 500 現金勘定 摘要 借方 貸方 売上 500 摘要は相手科目の売上 売上勘定 摘要 借方 貸方 現金 500 摘要は相手科目の現金 金額は仕訳と同じ側。摘要には相手科目を書く
1つの仕訳は2つの勘定に転記される。金額の左右は仕訳のまま、摘要だけが相手科目になる

図のとおり、現金勘定には借方に500と書き、摘要には相手科目である売上と書きます。売上勘定には貸方に500と書き、摘要には相手科目である現金と書きます。金額の左右は仕訳と同じ、摘要だけが反対側の科目になる — この関係が転記のすべてです。ここが腑に落ちれば、総勘定元帳の記入例はどれも同じ形で読めるようになります。

転記のタイミングと頻度 — いつ作るのが正解か

いつ転記するかに法律上の決まりはありませんが、実務では取引が起きてから遅くとも翌月中には記帳を終えるのが目安です。作成時期の考え方は事業規模で変わります。

記帳の頻度向いているケース注意点
毎日現金商売で日々の入出金が多い現金残高と帳簿残高を毎日照合できる
毎週取引が週数十件程度領収書をためすぎず記憶も新しい
毎月(月次)多くの中小企業・個人事業主月次で試算表を作り数字を確認できる
年1回取引がごく少ない場合のみミスの発見が遅れ、決算直前に破綻しやすい

会計ソフトを使う場合、仕訳を入力した瞬間に総勘定元帳へ自動で反映されるため、転記という作業自体が消えます。手を動かすのは仕訳の入力だけになるので、入力のタイミング=記帳のタイミングと考えて構いません。年1回まとめて入力するやり方は、資料の紛失や記憶違いのリスクが高く、青色申告の要件である「整然かつ明瞭な記録」という観点からも避けるべきです。

勘定科目の並べ方 — 勘定科目一覧と5要素・3勘定/5勘定

総勘定元帳は勘定科目ごとにページを分けるので、科目の順番を決めておく必要があります。順番は自由ではなく、決算書の並びに合わせるのが原則です。

科目の順番は5要素の順に並べる

簿記の勘定科目は資産・負債・純資産・収益・費用の5つのグループ(5要素)に分かれます。総勘定元帳のページもこの順に並べます。前半の資産・負債・純資産が貸借対照表を作る科目、後半の収益・費用が損益計算書を作る科目です。この並びにしておくと、決算のときに上から順に写すだけで決算書の形になります。

各グループの中は、資産なら換金しやすいものから(現金→預金→売掛金→棚卸資産→固定資産)、負債なら支払期限の早いものから、というように流動性の高い順に並べるのが一般的です。会計ソフトでは科目コードという番号でこの順番を管理していて、たとえば100番台が資産、200番台が負債、といった採番が使われます。

総勘定元帳の勘定科目一覧(5要素別)

小売業をはじめ多くの事業で使う代表的な科目を、5要素別に整理した一覧です。自社で実際に発生する科目だけページを作れば十分で、一覧のすべてを用意する必要はありません。

要素意味代表的な勘定科目
資産持っている財産・権利現金/小口現金/普通預金/当座預金/売掛金/未収入金/前払金/立替金/繰越商品/建物/車両運搬具/備品/土地/有価証券/のれん
負債支払う義務買掛金/未払金/前受金/預り金/短期借入金/長期借入金/役員借入金/未払法人税等
純資産資産から負債を引いた正味の持ち分資本金/元入金/利益準備金/繰越利益剰余金
収益もうけの源売上/受取利息/受取手数料/雑収入
費用もうけを生むための支出仕入/給料/賃金/法定福利費/旅費交通費/水道光熱費/通信費/接待交際費/租税公課/減価償却費/支払手数料/支払利息

仕訳で使う科目そのものの選び方は、簿記3級の仕訳の記事に勘定科目一覧とパターン別の例題をまとめてあります。

3勘定(三分法)と5勘定(五分法)の違い

商品売買をどの科目で記録するかには、いくつかの方法があります。総勘定元帳のページ構成もこの選択によって変わります。

分記法
商品と商品売買益の2科目で処理する。売るたびに利益が出るが、原価の把握が必要で手間がかかる。
三分法(3勘定)
仕入・売上・繰越商品の3科目で処理する。日商簿記3級をはじめ実務でも標準的な方法。
五分法(5勘定)
5勘定とは、三分法の3科目に仕入値引・戻しと売上値引・戻りの科目を加えた5科目で処理する方法のこと。値引や返品を独立した科目で管理できる。5勘定法とも呼ばれる。

「6勘定」という言い方で検索されることもありますが、日商簿記の学習でまず押さえるべきは三分法(3勘定)です。3勘定と5勘定の違いは、値引・返品を専用の科目に分けるかどうかの一点で、総勘定元帳の作り方そのものは変わりません。分けたほうが返品の多い業種では実態が見えやすくなりますが、ページ数は増えます。

ページの分け方と作成のコツ

手書きの場合、1科目に何ページ割り当てるかを最初に決めます。取引の多い現金・売上・仕入は多めに、年に数回しか動かない科目は1ページで足ります。科目が増えたときのために、後ろに数ページの余白を残しておくと差し込みで対応できます。会計ソフトなら科目を追加した時点で自動的にページが用意されるので、この心配は不要です。

総勘定元帳の見方 — 残高の読み取り・マイナス表示・発生額累計

作り方の次は見方です。総勘定元帳の見方(みかた)がわかると、数字のどこを見れば何が起きているのかを判断できるようになります。なお「総勘定元帳の味方」と表記されることもありますが、正しくは見方です。

残高欄をどう読むか

残高式の総勘定元帳では、いちばん右の残高欄がその時点の科目残高を表します。読み方の基本は次の3点です。

  • 最終行の残高がその科目の現在残高 — 現金勘定の最終行が32万円なら、帳簿上の現金は32万円ある。
  • 借/貸欄で残高がどちら側かを確認する — 資産科目は「借」、負債・純資産・収益科目は「貸」が正常。
  • 正常と逆側になっていたら要注意 — 現金が「貸」になっているなど、通常あり得ない側に残高が立っている行は入力ミスの可能性が高い。

マイナス表示と発生額累計の意味

会計ソフトの総勘定元帳では、残高がマイナスで表示されることがあります。マイナスは「残高が本来と反対側にある」という意味です。現金がマイナスなら現金残高より多く支払った記録になっており、実際にはあり得ないので記帳漏れか二重計上を疑います。一方、クレジットカードの未払金がマイナスになっているときは、支払を先に計上して利用分の計上が漏れている、といった原因が典型です。

発生額累計という列を持つソフトもあります。これは期首からその行までに、その科目の借方・貸方それぞれに積み上がった金額の合計です。売上高の発生額累計を見れば、その時点までの累計売上がわかります。残高が「今いくら残っているか」を示すのに対し、発生額累計は「これまでいくら動いたか」を示すという違いがあります。

チェックすべきポイントと相殺の扱い

総勘定元帳から異常を見つけるときは、次の観点でチェックします。この作業をしておくと、決算時にまとめて原因を探す手間がなくなります。

見る場所チェック内容疑うべきこと
現金・預金の残高実際の手許現金・通帳残高と一致するか記帳漏れ、金額の入力ミス
売掛金の各行入金の行と対応して消えているか入金の相殺漏れ、二重計上
売上高の月別推移不自然に飛んでいる月がないか計上月のずれ、締日の誤り
経費科目の異常値桁が1つ違う金額がないか入力ミス、私的支出の混入

売掛金買掛金を相殺する取引がある場合、総勘定元帳上は売掛金の減少と買掛金の減少が同日に並びます。相殺の明細は元帳の1行だけでは追いにくいので、摘要に相殺相手を必ず書き残してください。取引先ごとの内訳を見たいときは、総勘定元帳ではなく補助元帳(得意先元帳)を開くのが正解です。このとき、補助元帳に並ぶ取引先別の合計は、総勘定元帳金額と必ず一致していなければなりません。一致しなければ、どちらかに計上漏れがあります。freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトでも、元帳画面から取引先や補助科目で絞り込むと同じ明細が確認できます。

総勘定元帳の締め方 — 月締め・次期繰越・英米式決算法

総勘定元帳は書きっぱなしにせず、区切りごとに締めます。締め方には月単位の月締めと、年度末の締切(決算)の2段階があります。

月締めのやり方 — 月ごとに区切って残高を確定する

月締めの書き方は単純で、その月の最終行の下に線を引き、月の借方合計・貸方合計を計算し、残高を確定させます。手書きの帳簿では合計行を書いてから単線を引き、翌月の行を続けて書き始めます。月ごとに締めておくと、月次試算表が作れるようになり、経営状況を毎月把握できます。

月締めのメリットは、誤りを1か月分の中に閉じ込められることです。年に1回しか締めないと、差異が出たときに1年分を遡ることになります。月次で現金・預金の残高照合まで済ませておけば、探す範囲は最大でも1か月分です。

次期繰越と前期繰越 — 年度をまたぐときの書き方

会計期間が終わったら、資産・負債・純資産の各勘定は残高を翌期へ引き継ぎます。この処理を繰越と呼びます。書き方は次のとおりです。

  1. 残高がある側と反対側に、摘要「次期繰越」として残高と同額を書き込む。これで借方合計と貸方合計が一致する。
  2. 借方・貸方の合計金額を書き、2重線で締め切る。
  3. 翌期の最初の行に、摘要「前期繰越」として元の側に同額を書き、繰越残高としてスタートする。

次期繰越を反対側に書くのは、貸借を一致させて締め切るための計算上の操作であって、実際に取引が起きたわけではありません。区別できるよう赤字で書く慣行もあります。この一連の手続きを英米式決算法と呼びます。英米式決算法では、資産・負債・純資産の各勘定を次期繰越で締め切り、その繰越金額を集めて繰越試算表を作ります。

損益勘定への振替 — 収益・費用は繰り越さない

収益・費用の勘定は繰り越しません。損益という決算専用の勘定を作り、そこへ全額を振り替えて残高をゼロにします。損益の書き方は、収益の各勘定の残高を損益勘定の貸方へ、費用の各勘定の残高を損益勘定の借方へ集める形です。

集め終わると、損益勘定の貸方合計(収益)と借方合計(費用)の差額がその期の利益になります。貸方が大きければ当期純利益、借方が大きければ当期純損失です。この差額を、法人なら繰越利益剰余金へ、個人事業主なら元入金へ振り替えて締め切ります。なお資本金求め方を勘違いしやすいのですが、当期の利益は資本金には入りません。資本金が動くのは増資や減資をしたときだけで、利益は繰越利益剰余金に積み上がります。期末の純資産は、資本金と繰越利益剰余金などの合計として総勘定元帳の上に現れます。

つまり、収益・費用の勘定は毎年ゼロから始まり、資産・負債・純資産の勘定は前期からの残高を引き継いで始まります。この違いが、繰越の有無を分ける唯一の基準です。決算の全体像は簿記3級の決算の記事で手続きの順番から解説しています。

決算での役割 — 試算表・精算表・決算書へのつながり

総勘定元帳は決算に必要な帳簿です。決算で総勘定元帳がどう使われるのかを、後工程の書類との関係で整理します。

試算表との違い — 元帳の残高を1枚に並べたもの

試算表は、総勘定元帳の全科目の残高を1枚の表に並べたものです。作り方は、各勘定のページの残高を科目名とともに写していくだけです。試算表との違いは情報の粒度で、総勘定元帳が1件ずつの明細を持つのに対し、試算表は科目ごとの合計・残高しか持ちません。

試算表を作る目的は、借方合計と貸方合計が一致するかを確かめることにあります。一致しなければ、どこかで転記ミスか計算ミスがあるということです。差額が出たら総勘定元帳に戻って原因を探します。精算表は、この試算表に決算整理と決算書への振り分けを書き加えて1枚にした作業用紙です。仕訳帳・総勘定元帳・試算表・精算表は、この順につながっています。精算表の埋め方は簿記3級の精算表の記事で手順を追って解説しています。

決算整理仕訳と再振替仕訳も総勘定元帳に転記する

決算では、減価償却費の計上、売上原価の算定、貸倒引当金の設定、経過勘定の計上といった決算整理仕訳を切ります。決算仕訳も通常の仕訳と同じく仕訳帳に記帳し、総勘定元帳へ転記します。決算整理を反映した後の残高が、決算書に載る数字です。

前払費用や未払費用のように翌期首に戻す処理が必要なものは、翌期の最初に再振替仕訳を切り、これも総勘定元帳へ転記します。減価償却の計算方法は減価償却の記事に耐用年数と仕訳例をまとめてあります。

決算書との違い — 元帳は明細、決算書は要約

決算書(決算報告書・決算書類)は、総勘定元帳の残高を集計し、外部に見せる形に整えたものです。決算書との違いは、明細か要約かという点にあります。

書類作られ方載っている情報
総勘定元帳仕訳帳から転記科目ごとの取引1件ずつ
試算表元帳の残高を集計科目ごとの合計と残高
貸借対照表資産・負債・純資産の残高期末時点の財政状態
損益計算書(PL)収益・費用の残高1年間の経営成績

貸借対照表との違い、損益計算書との違いを一言でいえば、総勘定元帳は全科目の明細、決算書はそこから作った要約ということになります。損益計算書と貸借対照表の関係や読み方は貸借対照表の読み方の記事で図解しています。キャッシュフロー計算書も、総勘定元帳の現金・預金勘定の動きを組み替えて作ります。

勘定科目内訳明細書との違いと、開示・提出の範囲

法人税の申告では勘定科目内訳明細書(勘定科目明細書)を添付します。これは売掛金買掛金などの主要科目について、相手先別の内訳を書く書類です。総勘定元帳との違いは、提出する書類か、社内に保存する帳簿かという点です。勘定科目内訳明細書は申告書とともに提出しますが、総勘定元帳自体は提出せず、保存しておいて税務調査で求められたときに見せます。

総勘定元帳は一般に公開される書類ではありません。株主に対しても、通常開示されるのは決算書までで、会計帳簿そのものの閲覧には会社法上の一定の要件が必要です。連結決算を行う企業では、親会社・子会社それぞれが自社の総勘定元帳を持ち、それを合算・調整して連結財務諸表を作ります。連結の元になるのはあくまで各社の元帳です。

勘定科目別の書き方① 現金・預金・売上・仕入

ここからは、実際によく調べられる科目について総勘定元帳の書き方を見ていきます。まずは取引件数が最も多い現金・預金と、売上・仕入です。

現金・小口現金の元帳

現金勘定は資産科目なので、入金は借方、出金は貸方に書きます。残高は常に借方(借)で、貸方残高になったら必ず記帳ミスです。現金の元帳は現金出納帳とほぼ同じ内容になるため、どちらか一方を主として運用するのが現実的です。小口現金制度を採用している場合は、小口現金勘定を別に立て、部署に前渡しした金額と精算の履歴をこの勘定で追います。

普通預金・当座預金・当座借越

預金は口座ごとに補助科目を作るのが実務の基本です。普通預金の元帳は通帳の記帳内容とそのまま突き合わせられるので、月末に通帳残高と元帳残高が一致するかを必ず確認します。一致しない場合、未達の入金や引き落としの計上漏れを疑います。銀行から融資を受けている場合、この照合が済んでいる帳簿かどうかは審査でも見られます。

当座預金は小切手による支払に使う口座で、残高を超えて振り出すと当座借越になります。当座借越は実質的な借入なので、決算時には当座借越勘定(または短期借入金)へ振り替えて負債として表示します。

売上・売上高の元帳

売上は収益科目なので、計上は貸方、返品や値引による取り消しは借方に書きます。売上勘定の見方として押さえたいのは、貸方の累計がその期の売上高だという点です。返品(売上戻り)があると借方に金額が立ち、貸方合計から差し引かれます。

現金販売なら相手科目は現金、掛け販売なら売掛金、クレジットカード決済なら売掛金または未収入金です。入金があった時点ではなく商品を引き渡した時点で売上を計上するのが原則で、この計上時期がずれると月別の売上高の推移が実態とずれます。

仕入・売上原価の元帳

仕入は費用科目なので、購入は借方、返品(仕入戻し)や値引は貸方に書きます。三分法では、期中は仕入勘定に購入額を積み上げ、決算時に繰越商品との振替を行って売上原価を算定します。この決算整理の結果、仕入勘定の残高がその期の売上原価になります。

科目増えたとき減ったとき通常の残高
現金・預金借方(入金)貸方(出金)
売上貸方(計上)借方(返品・値引)
仕入借方(購入)貸方(返品・値引)
受取利息・受取手数料貸方(受取)借方(取消)

受取利息は、預金利息が振り込まれたときに貸方へ計上します。金額が小さくても収益なので、雑収入とまとめずに専用の科目を立てておくと決算時の処理が楽になります。支払手数料は逆に費用科目で、振込手数料などを借方に計上します。

勘定科目別の書き方② 売掛金・買掛金・未払金とクレジット取引

債権債務の科目は、発生と消滅がペアで並ぶのが総勘定元帳上の特徴です。発生だけあって消滅がない行が残っていたら、未回収・未払いか計上ミスのどちらかです。

売掛金・買掛金の元帳

売掛金は資産科目で、掛け売上の発生時に借方、入金時に貸方へ書きます。買掛金は負債科目で、掛け仕入の発生時に貸方、支払時に借方へ書きます。総勘定元帳の売掛金は取引先が合算された金額なので、誰にいくら残っているかを見たいときは売掛金元帳(得意先元帳)を開きます。売掛金買掛金の意味と回収実務は売掛金とは買掛金とはの記事で詳しく扱っています。

未払金・未収入金・前払金・前受金の使い分け

似た科目が多く混乱しやすい部分です。本業の商品売買から生じたかどうかで使い分けます。

売掛金 / 買掛金
本業の商品・サービスの売買から生じた未収・未払。
未収入金(未収金) / 未払金
本業以外から生じた未収・未払。備品の売却代金、経費の未払いなど。未払金とは、すでに債務が確定していて支払がまだのものを指す。「未払い金」と表記されることもある。
前払金 / 前受金
商品の受け渡し前に支払った・受け取った手付金や内金。
預り金 / 立替金
源泉所得税や社会保険料など一時的に預かった金銭、逆に一時的に立て替えた金銭。

クレジットカード払いの書き方

クレジットカードで経費を払ったときは、利用日と引き落とし日の2回に分けて記帳します。利用日に「(借)経費科目 /(貸)未払金」、引き落とし日に「(借)未払金 /(貸)普通預金」と切るのが基本形です。カード払いのクレジット未払金は、この2つの行がペアで並ぶことで消えていきます。

クレジットカードの未払金がマイナス(借方残高)になっているときは、引き落としだけ計上して利用明細の計上が漏れているケースがほとんどです。逆に残高が膨らみ続けているときは、引き落としの記帳漏れを疑います。レシートや領収書は日付順にまとめ、カードの利用明細と突き合わせておくと、この照合が一気に楽になります。

借入金の元帳

借入金は負債科目で、借入時に貸方、返済時に借方へ書きます。返済期限が1年以内なら短期借入金、1年を超えるなら長期借入金に分けます。返済額のうち元本部分だけを借入金勘定に書き、利息部分は支払利息(費用)として別の行に分けるのがポイントです。役員から会社への貸付は役員借入金という科目で区別し、通常の金融機関からの借入と混ぜないようにします。

取引先ごとの明細を追いたい場合は、取引明細書やカードの利用明細を保存したうえで、補助科目を設定して元帳を分けるのが確実です。総勘定元帳は合算値しか見せないという前提を忘れないでください。

勘定科目別の書き方③ 経費・給与・固定資産・税金とインボイス

費用科目と資産科目、そして消費税まわりの書き方をまとめます。経費の計上は件数が多く、総勘定元帳のページ数もここで一気に増えます。

経費科目の元帳 — 販管費の分け方

経費(販売費及び一般管理費、いわゆる販管費)は費用科目なので、発生時に借方へ計上します。水道光熱費・旅費交通費・接待交際費・通信費・消耗品費といった科目に分けるのは、後から使途を分析できるようにするためです。科目を細かく分けすぎると転記の判断に迷い、逆に雑費に寄せすぎると分析ができなくなります。年間の発生額が一定以上ある使途は専用の科目を立てる、という基準がひとつの目安です。

給与・賃金・労務費と預り金

給与を支払ったときは、総支給額を給料(または賃金)として借方に計上し、源泉所得税や社会保険料の本人負担分を預り金として貸方に、差引の手取額を現金・預金の貸方に書きます。1つの仕訳で相手科目が複数になるため、給料勘定の摘要は諸口になります。

製造業では、製造現場の人件費を労務費、製造に間接的に関わる費用を製造間接費として集計します。工業簿記では、これらの原価科目の元帳が製品原価の計算に直結します。個人事業主が家族に支払う専従者給与は、青色申告で事前に届出をしている場合に必要経費として計上できる科目です。適用の可否や届出の期限は状況によって変わるため、国税庁の公式サイトで最新情報を確認してください。

固定資産・棚卸資産・有価証券

建物や車両などの固定資産は、取得時に取得価額の全額を資産として借方に計上し、その後は毎期の決算で減価償却費を計上して価値を減らしていきます。固定資産の元帳は取得と償却しか動かないので行数は少なく、資産1件ごとの詳細は固定資産台帳で管理します。賃貸用のマンションを保有している場合も、建物と土地を分けて計上し、建物部分だけを償却するのが基本です。

棚卸資産(繰越商品)は、期首の在庫と期末商品棚卸高を決算整理仕訳で振り替えることで動きます。期中はほとんど動かず、決算時にだけ2行が入るのが典型的な姿です。有価証券は取得時に借方へ計上し、決算で時価評価が必要な区分については評価差額を計上します。企業買収で生じるのれんは、資産として計上した後、定められた期間で償却していきます。

租税公課・消費税・インボイス制度での記載

収入印紙や固定資産税などの税金は租税公課という費用科目で処理します。どの税金が租税公課になるかは収入印紙の勘定科目の記事で整理しています。

消費税の記載については、税込経理か税抜経理かをあらかじめ決めて統一します。税抜経理なら仕入時の消費税額を仮払消費税、売上時の消費税額を仮受消費税として別の科目に分けて元帳に計上します。

インボイス制度が始まった後も、帳簿に記載すべき事項そのものは基本的に変わりません。取引先の名称、取引年月日、取引内容、金額を記載するという従来の要件が土台です。ただし軽減税率の対象取引がある場合は、その旨がわかるように摘要へ記号を付けるなどの工夫が必要になります。インボイスの記載例として押さえるべきなのは、登録番号は保存する請求書等の側に記載されていればよく、帳簿の各行に登録番号を書き写す必要は原則としてない、という点です。免税事業者からの仕入について経過措置の適用を受ける場合は、その旨を帳簿に記載して保存することが求められます。制度の細部は改正されることがあるため、適用にあたっては国税庁の公式サイトで最新の要件を確認してください。

農業を営む場合は、農業所得用の科目体系を使い、作目別に収益と経費を集計するのが一般的です。農業簿記に対応した会計ソフトを使うと、この科目体系があらかじめ用意されています。

エクセル・スプレッドシートで総勘定元帳を作る — テンプレートと関数

取引件数が少ないうちは、エクセルで総勘定元帳を作るのが手軽です。会計ソフトの費用をかけずに始められ、フォーマットも自由に決められます。

エクセルでの作り方 — 2シート構成が基本

エクセルで作るときは、仕訳帳シートと総勘定元帳シートの2枚に分けるのが定石です。仕訳帳シートに1行1仕訳で入力し、総勘定元帳シートは関数で科目ごとに抽出する、という組み立てにすると、二重入力をせずに済みます。

  1. 仕訳帳シートに、日付・借方科目・借方金額・貸方科目・貸方金額・摘要の列を作る。
  2. 科目名は入力規則のドロップダウンにして、表記ゆれを防ぐ。
  3. 総勘定元帳シートの先頭に科目を選ぶセルを置き、FILTER関数(または SUMIFS と IF の組み合わせ)で該当行だけを抽出する。
  4. 残高列は「1つ上の残高+借方−貸方」の式を下方向にコピーして、行ごとに残高が出るようにする。
  5. 科目ごとの合計は SUMIF 関数で仕訳帳シートから直接集計し、試算表シートに並べる。

使う関数は SUMIF・SUMIFS・FILTER・VLOOKUP 程度で足ります。マクロ(VBA)まで組めば科目ごとのシートを自動生成することもできますが、保守の手間を考えると関数だけで完結させたほうが長続きします。Googleスプレッドシートでも同じ関数がほぼそのまま使え、Macの Numbers でも同等の構成が作れます。スプレッドシートなら複数人での同時入力やスマートフォンからの確認もできます。

テンプレートを使う場合の選び方

エクセルの無料テンプレートは、会計ソフト会社や商工会議所などが配布しているものが多くあります。無料テンプレートを選ぶときは、次の点を確認してください。

確認項目見るポイント
様式残高式か。借/貸欄と残高欄があるか
仕訳帳との連携仕訳帳シートから自動抽出されるか、手入力か
科目のカスタマイズ自社の勘定科目を追加・変更できるか
表紙・出力表紙シートがあるか、PDFテンプレートとして印刷しやすいか

個人事業主向けのテンプレートは、青色申告決算書の科目に合わせて作られているものを選ぶと、確定申告のときに転記が楽になります。ファイルは年度ごとに分けて保存し、ファイル名に年度を入れておくと後から探しやすくなります。

エクセル運用の限界 — 乗り換えを考えるタイミング

エクセルは無料で自由度が高い反面、次の場面で限界が来ます。取引が月100件を超えたあたりが、会計ソフトへの乗り換えを検討する目安です。

  • 消費税の税区分ごとの集計が手作業になり、申告書の作成に時間がかかる。
  • 訂正履歴が残らないため、電子帳簿保存法の優良な電子帳簿の要件を満たしにくい。
  • 銀行明細やクレジットカード明細の自動取込ができず、入力の手間が減らない。
  • 数式を壊してしまったときに、原因の特定に時間がかかる。

逆にいえば、取引が少なく消費税の免税事業者である間は、エクセルでも十分に実用的です。無料で始めて、事業の成長に合わせてソフトへ移行するという順序で問題ありません。

会計ソフトで総勘定元帳を出力・印刷する

会計ソフトを使っていれば、総勘定元帳は仕訳を入力した時点で自動的に作られます。作成する作業は不要で、必要なのは見たいときに出力する操作だけです。

どのソフトでも共通する出し方の流れ

製品ごとにメニュー名は違いますが、総勘定元帳を出す手順はおおむね共通しています。

  1. 「帳簿」「レポート」「決算・申告」といったメニューから、総勘定元帳(元帳)を選ぶ。
  2. 会計期間や月を指定し、表示したい勘定科目(または全科目)を選ぶ。
  3. 画面で内容を確認し、印刷またはPDF・CSV・エクセル形式でエクスポートする。
  4. 全科目をまとめて出したいときは、1括出力・一括印刷の機能を使う。

「元帳が表示されない」というときに多い原因は、会計期間の指定が実際の仕訳の日付と合っていないことです。次に多いのが、金額が0の科目を非表示にする設定が効いているケースです。表示条件を広げてから絞り込み直すと、たいていは解決します。

主な会計ソフトと出力形式

国内で使われている主な会計ソフトを、対象規模の目安とともに整理しました。メニュー構成や対応する出力形式は改訂で変わるため、実際の操作は各ソフトの公式ヘルプで確認してください。

ソフト提供元主な対象
弥生会計・やよいの青色申告弥生個人事業主〜中小企業。インストール型とクラウド型がある
freee会計(フリー会計)freee個人事業主〜中小企業。クラウド型
マネーフォワードクラウド会計マネーフォワード個人事業主〜中堅企業。クラウド型
勘定奉行オービックビジネスコンサルタント中小〜中堅企業
会計王・みんなの青色申告・農業簿記12ソリマチ個人事業主〜中小企業。農業専用の製品もあり、農業簿記はバージョン番号付きで販売される
タックスナップTxTo個人事業主・フリーランス向けのスマートフォン確定申告アプリ
大蔵大臣・建設大臣・福祉大臣(大臣シリーズ)応研中小企業。建設業・福祉法人など業種特化版がある
キーパー財務シスプラ会計事務所・中小企業
財務応援エプソン中小企業・会計事務所
フリーウェイ経理フリーウェイジャパン小規模事業者。無料プランがある
ミロク情報サービス(MJS)・ICS各社会計事務所とその関与先
OBIC7・SAP などのERP各社大企業。基幹システムの一機能として総勘定元帳を持つ

クラウド型のソフトは、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、仕訳を自動で提案してくれます。この自動連携があると、総勘定元帳は入力するものではなく確認するものに変わります。無料で使える会計ソフトやアプリもありますが、無料プランは仕訳件数や機能に制限があることが多いので、事業規模に合うか確認してから選んでください。おすすめを1つに絞るのは難しく、確定申告の方式・業種・税理士が使っているソフトとの相性で決まります。

PDF・CSV・エクセルへの出力と一括処理

出力形式は用途で使い分けます。印刷して綴じるならPDF、他のツールで加工するならCSVかエクセル、税理士に渡すなら相手の指定形式です。CSVで出力できると、エクセル側でピボットテーブルを使った分析ができるようになります。逆に他のソフトからのインポートで仕訳データを取り込む場合も、CSVが標準的な受け渡し形式です。

大企業向けのERPでは、総勘定元帳を照会・出力するためのトランザクションコードや、データが格納されるテーブルが製品ごとに決まっています。SAPのような製品を使っている場合は、自社の設定に依存する部分が大きいため、社内の運用マニュアルか製品の公式ドキュメントに従ってください。

手書きで作る — ノート・ルーズリーフ・帳簿用紙と綴じ方

総勘定元帳は手書きでも作れます。法律上、帳簿の作成方法に「ソフトを使うこと」という制約はありません。取引が少ない事業や、簿記の学習のために手を動かしたい場合は手書きが有効です。

何に書くか — ノート・ルーズリーフ・市販の帳簿用紙

選択肢は3つあり、科目ごとにページを分けられるかで選ぶのが基本です。

市販の帳簿用紙(バインダー式)
あらかじめ罫線と欄が印刷されている。コクヨなどの文具メーカーが「元帳」「総勘定元帳」として販売しており、文具店や通販のアスクルなどで購入できる。売ってる場所が分からない場合は、通販で「総勘定元帳 用紙」と検索するのが早い。エッサムのように会計事務所向けの帳簿用品を扱うメーカーもある。
ルーズリーフ
科目が増えたときに用紙を差し込める。自分で罫線を引くか、エクセルで作った様式を印刷して綴じる。
大学ノート・100均のノート
最も安価。100均の帳簿用ノートや仕訳帳ノートも使える。ただしページを差し込めないため、科目ごとのページ数を最初に決め打ちする必要がある。

取引の量が読めないうちは、ルーズリーフかバインダー式の帳簿用紙を選んでおくと後から詰まりません。用紙はA4サイズが扱いやすく、印刷したものと混ぜて綴じられます。

綴じ方・製本と表紙・インデックス

1年分がまとまったら、年度ごとに綴じて保存します。綴り方はバインダーのまま保管しても、留め具で製本しても構いません。市販の帳簿用ファイルには、金属の留め具やネジ式の綴じ具が付いたものがあり、用紙をしっかり固定できます。ファイルの外し方は製品によりますが、留め具のレバーを開くかネジを緩めるだけで外れます。無理に引き抜くと綴じ穴が裂けるので避けてください。

  • 表紙 — 事業者名・会計期間・帳簿の種類(総勘定元帳)を書く。表紙のテンプレートを印刷して使うと体裁が整う。
  • 背表紙 — 年度と帳簿名を書いておくと、棚に並べたときに一目で探せる。
  • インデックス — 貼り方は単純で、科目の頭のページの右端に、5要素の順に少しずつ位置をずらして貼る。すべて同じ高さに貼ると重なって探せなくなる。必要かどうかは科目数次第で、20科目を超えるなら貼る価値がある。
  • ラベル — 資産は青、費用は赤というように色でグループを分けると、探す速度が上がる。ラベルの色分けはあくまで自分用の目印なので、決まりはない。

用紙の枚数は科目数と取引件数で決まります。何枚必要かの目安は、動きの多い現金・預金・売上・仕入に各数枚、それ以外の科目に1枚ずつ、というところから始めて、足りなくなったら追加する形で問題ありません。両面印刷にすると枚数は半分になりますが、記入スペースが窮屈になるので、書き込みが多い科目は片面のままにしておくのが無難です。

誰が作成するか

作成者に資格は不要です。事業主本人でも、経理担当者でも、税理士に記帳代行を依頼しても構いません。ただし帳簿の内容に責任を負うのは事業主であり、税務調査で説明を求められるのも事業主です。記帳を外部に任せる場合でも、月次で元帳に目を通し、身に覚えのない行がないか確認する習慣は持っておいてください。

印刷は義務?紙・PDF・電子帳簿保存法の要件

会計ソフトで記帳している人がいちばん気にするのが、総勘定元帳を紙に印刷して保管する必要があるかどうかです。ここは制度の理解が必要な部分なので、順を追って整理します。

原則は紙保存、電子保存は要件を満たせば可

国税関係帳簿は、原則として紙で保存するのが法律上の建前です。会計ソフトで作った総勘定元帳も、この原則に立てば印刷して保存することになります。ただし電子帳簿保存法の要件を満たせば、印刷せずに電子データのまま保存できます。つまり印刷が必要かどうかは、電子帳簿保存法の要件を満たしているかで決まります。

電子帳簿等保存(自分で作成した帳簿を電子データのまま保存すること)は任意であり、紙に印刷して保存する従来のやり方も引き続き認められています。義務化されたのは電子取引データの保存で、これは帳簿ではなく、メールなどで受け取った請求書・領収書のデータの話です。この2つは混同されやすいので分けて理解してください。

電子データのまま保存するための要件

帳簿を電子データのまま保存する場合、一般的に次のような要件が求められます。要件を満たさないまま印刷もしていない状態が、最も避けるべき形です。

  • システム関係書類の備付け — 使用している会計ソフトのマニュアルや事務処理規程を備え置く。
  • 見読可能装置の備付け — ディスプレイとプリンタを用意し、求められたときに画面表示・印刷して示せる状態にする。
  • ダウンロードの求めに応じられること — 税務調査でデータの提出を求められたら応じられるようにする。

さらに、訂正削除の履歴が残ること、帳簿間の相互関連性が確保されていること、日付・金額・取引先での検索ができることという要件を満たすと優良な電子帳簿として扱われ、過少申告加算税の軽減や、個人事業主であれば青色申告特別控除65万円の適用といった優遇を受けられます。市販の会計ソフトの多くはこれらの要件に対応した機能を備えていますが、対応状況は製品とプランによって異なるため、導入前に確認してください。制度の詳細と最新の要件は国税庁の公式サイトで確認するのが確実です。

PDF保存の可否と再発行

「元帳をPDFにして保存すればよいか」という疑問はよく出ますが、単にPDFに出力してフォルダに置くだけでは、上記の要件、特に訂正削除履歴や検索機能を満たしません。PDF保存の要件を満たすには、保存方法とセットで社内の事務処理規程を整える必要があります。会計ソフトの中でデータを保持し続ける形のほうが、要件を満たしやすいのが実情です。

紙で保存していた総勘定元帳を紛失した場合、会計ソフトを使っていればデータから再発行できます。逆に手書きの帳簿を失うと復元手段がないため、手書き運用では保管場所の管理がより重要になります。

総勘定元帳の保存期間 — 法人7年(10年)・個人7年と廃棄のタイミング

総勘定元帳等の国税関係帳簿には保存義務(保管義務)があり、保存期間は法令で定められています。何年保存・何年保管すべきかは法人か個人か、どの法律を基準にするかで変わります。

法人の保存期間 — 法人税法は7年、会社法は10年

法人税法では、帳簿書類の保存期間を7年としています。起算点は事業年度の確定申告書の提出期限の翌日で、決算日からではありません。ただし、青色申告で欠損金(赤字)が生じた事業年度については、繰越控除との関係で10年の保存が必要になります。白色申告で災害損失金額が生じた事業年度も同様に10年です。

一方、会社法は会計帳簿とその事業に関する重要書類について、帳簿閉鎖の時から10年間の保存を求めています。総勘定元帳はこの会計帳簿に含まれます。法人税法の7年と会社法の10年は根拠となる法令が違うだけで、どちらも守る必要があるため、実務では長いほうの10年で統一して保管するのが安全です。

区分保存期間根拠・起算点
法人(法人税法)7年確定申告書の提出期限の翌日から
法人(欠損金が生じた事業年度)10年繰越控除の適用があるため延長
法人(会社法)10年帳簿閉鎖の時から
個人・青色申告7年確定申告期限の翌日から
個人・白色申告(法定帳簿)7年収入金額や必要経費を記載した帳簿
個人・白色申告(任意帳簿・書類)5年法定帳簿以外の帳簿と書類

個人事業主の保管期間

青色申告をしている個人事業主は、総勘定元帳を含む帳簿を7年間保管します。領収書などの現金預金取引等関係書類も原則7年です。白色申告の場合、収入金額や必要経費を記載した法定帳簿は7年、それ以外の任意帳簿や請求書・領収書などの書類は5年とされています。1年や3年で捨ててよい帳簿はないと考えてください。

保存期間の数え方は「決算日から」ではなく申告期限の翌日からです。個人事業主なら翌年3月15日ごろが起算点になるため、実質的には決算日から7年3か月ほど手元に置くことになります。

いつまで持つか・廃棄のタイミング

保存期間を過ぎた帳簿は廃棄して構いません。ただし、次の場合は保存期間を過ぎても残しておくことをおすすめします。

  • 欠損金の繰越控除を使っている — 10年保存が必要な事業年度に該当する可能性がある。
  • 不動産や大型設備を保有している — 取得価額の根拠として、売却時まで取得時の記録が必要になる。
  • 係争中の取引がある — 民事上の時効が完成するまで証拠として必要になりうる。

廃棄するときは、取引先名や金額といった機微な情報が含まれるため、シュレッダーか溶解処理を使ってください。電子データの場合も、削除の記録を残したうえで確実に消去します。保存期間の起算点や特例は税制改正で変わることがあるので、廃棄を判断する前に国税庁の公式サイトで最新の取扱いを確認するか、顧問税理士に相談してください。

個人事業主・フリーランスの総勘定元帳 — 青色申告と白色申告

個人事業主やフリーランスにとって、総勘定元帳が必要かどうかは申告方式で決まります。ここを取り違えると、控除が受けられなくなるので確認しておきましょう。

青色申告65万円・55万円控除には複式簿記が必要

青色申告特別控除の65万円または55万円の適用を受けるには、複式簿記による記帳が条件です。複式簿記で記帳するということは、仕訳帳と総勘定元帳を備えるということなので、この控除を狙うなら総勘定元帳は必須になります。

65万円と55万円の差は記帳方法ではなく、申告の方法です。e-Taxによる電子申告を行うか、優良な電子帳簿の要件を満たして電子保存するかのいずれかを満たすと65万円、紙で期限内に申告する場合は55万円というのが基本的な区分です。適用要件は改正されることがあるため、申告前に国税庁の公式サイトで最新の条件を確認してください。

申告方式記帳方法総勘定元帳
青色申告 65万円控除複式簿記+電子申告または優良な電子帳簿必要
青色申告 55万円控除複式簿記+期限内の紙申告必要
青色申告 10万円控除単式簿記(簡易な記帳)形式としては不要
白色申告単式簿記(簡易な記帳)形式としては不要

10万円控除・白色申告なら総勘定元帳はいらない?

青色申告の10万円控除や白色申告では、単式簿記による簡易な記帳が認められています。この場合、総勘定元帳という形の帳簿を作らなくても要件は満たせます。ただし帳簿がいらないわけではありません。現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳といった簡易帳簿の備付けと保存は必要で、白色申告では収入金額や必要経費を記載した法定帳簿の保存義務があります。

「総勘定元帳が無い場合どうなるか」という点でいえば、青色確定申告で65万円・55万円控除を申告していたのに複式簿記の帳簿が備えられていない状態は、控除が否認されるリスクがあります。会計ソフトを使えば単式簿記と同じ手間で複式簿記の帳簿が自動生成されるので、控除の差額を考えると作らない理由はほとんどありません

確定申告で総勘定元帳は提出する?

確定申告のときに総勘定元帳を提出することはありません。青色申告で提出するのは確定申告書と青色申告決算書で、総勘定元帳は手元に保存しておく帳簿です。e-Taxで電子申告する場合も、元帳のデータを送信する手続きはありません。

提出はしませんが、税務調査ではまず総勘定元帳の提示を求められます。提出しないから作らなくてよい、という理解は誤りです。融資の申込みや補助金の申請で、決算書の裏付けとして元帳の提出を求められることもあります。青色申告で使う元帳の書き方は、ここまで説明してきた内容と同じで、個人事業主だからといって特別な様式が必要になるわけではありません。元入金や事業主貸・事業主借といった個人事業特有の科目が加わる点だけが違いです。

簿記3級・2級の試験で問われる総勘定元帳 — 勘定記入の解き方

日商簿記3級では、総勘定元帳への記入(勘定記入)が主に第2問で問われます。配点20点の問題としてよく出るテーマで、苦手にする受験者が多い論点でもあります。

簿記3級での出題パターン

日商簿記3級の問題の詳細を読む">簿記3級の問題として出るのは、次のような形です。

  • 勘定記入 — 与えられた取引を、指定された勘定(現金・売掛金・繰越商品など)のT字型に記入し、空欄を埋める。
  • 締切と繰越 — 決算にあたって勘定を締め切り、次期繰越・前期繰越の金額を答える。
  • 経過勘定の勘定記入 — 前払家賃や未払利息のように、期首の再振替から期末の繰越までを1つの勘定の中で追わせる。
  • 補助簿の選択 — ある取引がどの補助簿に記入されるかを選ばせる。

第2問の全体像と対策は簿記3級 第2問の記事にまとめています。日商簿記2級になると、勘定記入は特殊商品売買や本支店会計、固定資産の期中売却などと組み合わさり、より複雑になります。

勘定記入の解き方 — 3つの手順

勘定記入がややこしいと感じるのは、問題文の取引を頭の中で直接勘定に入れようとするからです。必ず仕訳を1回書いてから転記するという順序を守るだけで、正答率は大きく変わります。

  1. 問題文の取引を、日付順にすべて仕訳として下書きする。この時点では勘定のことは考えない。
  2. 下書きした仕訳の中から、答案で問われている勘定に関係する行だけを拾い、金額を左右そのままの側に書き写す。
  3. 摘要欄には相手科目を書く。相手が複数なら諸口と書く。最後に貸借の合計を出し、差額を次期繰越として締め切る。

間違いが起きやすいのは手順2で、金額の左右を仕訳と逆にしてしまうケースです。摘要に相手科目を書くという操作と、金額を同じ側に書くという操作を混ぜてしまうのが原因なので、この記事の転記の図をもう一度見返してください。

覚え方と練習方法

勘定記入がわからない、難しいと感じる段階で暗記に走るのは逆効果です。総勘定元帳は仕訳の集計にすぎないので、仕訳が正確に切れるようになれば勘定記入は自動的に解けるようになります。順番としては、仕訳を先に固めるのが最短です。

練習問題は、まず仕訳を1問1答で数をこなし、その後に勘定記入の例題へ進むのが効率的です。市販の簿記問題集を使う場合も、日商3級であれば仕訳の章を先に1周してから第2問対策に入ると、勘定記入で手が止まりにくくなります。簿記3級の練習問題で論点別の演習を、簿記3級の問題で出題構成を確認できます。Love.Accountants の仕訳ドリルは、勘定科目の選択と金額の入力をネット試験と同じ形式で無料で練習でき、間違えた問題は復習に自動で回ります。仕訳帳の練習問題としても、そのまま勘定記入対策の土台になります。

総勘定元帳の英語 — General Ledger(GL)と関連用語

外資系企業や英文会計に触れると、総勘定元帳は英語で表記されます。英訳はGeneral Ledgerで、読み方はジェネラル・レジャーです。略語のGL(またはG/L)はこの頭文字で、会計システムのモジュール名としても広く使われています。

英語で関連する帳簿・書類を並べると、日本語の体系とほぼ1対1で対応します。

日本語英語略語
総勘定元帳General LedgerGL
仕訳帳Journal / General JournalGJ
補助元帳Subsidiary Ledger
試算表Trial BalanceT/B
貸借対照表Balance SheetB/S
損益計算書Profit and Loss Statement / Income StatementP/L

売掛金の補助元帳は Accounts Receivable Subsidiary Ledger、買掛金なら Accounts Payable Subsidiary Ledger と呼ばれ、それぞれAR・APと略されます。中国語では「総账」「総分類账」などと表記され、日本語の「総勘定元帳」と字が似ているため、資料を読むときに混同しないよう注意してください。

まとめ — 総勘定元帳は仕訳の集計であり、決算書の材料

総勘定元帳の要点を整理します。

  • 総勘定元帳は、仕訳帳の記録を勘定科目ごとに集計した主要簿。仕訳帳が日付順、総勘定元帳が科目順という切り口の違いだけで、内容は同じ取引。
  • 転記の原則は金額は仕訳と同じ側、摘要には相手科目。相手が2つ以上なら諸口(複合)と書く。
  • 様式は標準式と残高式の2種類。実務では行ごとに残高が出る残高式が主流で、試験ではT字型の略式を使う。
  • 月次で締めて残高を確定し、期末は次期繰越で締め切る(英米式決算法)。収益・費用は損益勘定へ振り替えて繰り越さない。
  • 作り方はエクセル・会計ソフト・手書きのどれでもよい。取引が増えたら会計ソフトが最も確実。
  • 保存期間は法人が法人税法で7年(欠損金がある事業年度と会社法基準では10年)、個人の青色申告が7年。迷ったら長いほうに合わせる。
  • 青色申告で65万円・55万円控除を受けるなら、複式簿記=総勘定元帳の備付けが必須。

総勘定元帳を理解する近道は、仕訳を正確に切れるようになることです。総勘定元帳は仕訳の集計にすぎないので、仕訳が身につけば、元帳の書き方も見方も自然に読めるようになります。Love.Accountants の仕訳ドリルは、勘定科目の選択と金額の入力をネット試験と同じ形式で無料で練習でき、間違えた問題は復習として自動で出題されます。まずは仕訳を1日10問から始めて、総勘定元帳を「自分で読める帳簿」にしていきましょう。