日商簿記3級のサンプル問題に「公式の解答」は付いていない
最初に結論を書きます。日本商工会議所が公開している日商簿記3級のサンプル問題には、公式の解答が付いていません。配布されているのは「問題」のPDFと「答案用紙」のPDFの2点だけで、答えを載せたファイルはどこを探しても出てきません。サンプル問題の解答を探しているのに見つからないのは、探し方が悪いからではなく、そもそも公開されていないからです。
ただし、答え合わせができないという意味ではありません。商工会議所以外の資格スクールが、同じサンプル問題に対する模範解答と解説を無料で公開しています。つまり「問題は公式から、答えは予備校から」という組み合わせで入手するのが、現時点での正しい手順です。この記事では、その両方の入手先と、5セットの中身、解いたあとの使い方までを順番に説明します。
公開されているのは「問題」と「答案用紙」の2点だけ
商工会議所のサンプル問題ページを開くと、各設問について次の2つのリンクが並んでいます。
- 問題(PDF)
- 本試験と同じ体裁で作られた問題文です。金額・勘定科目の選択肢まで本番と同じ形式で印刷されています。
- 答案用紙(PDF)
- 解答を書き込む用紙です。第1問なら借方・貸方それぞれの記号欄と金額欄、第3問なら決算整理後残高試算表や貸借対照表・損益計算書の枠が印刷されています。
この2点で1セットです。3つ目のファイルとして解答が用意されているわけではなく、正誤の確認は受験者側に委ねられています。商工会議所も告知の中で、問題の内容や解答に関する個別の問い合わせには応じないと明記しています。
なぜ公式は答えを出さないのか
サンプル問題は、2021年度以降に実際の簿記検定試験で出題された問題の一部を、日本商工会議所が受験者の参考用に公開したものです。ネット試験の運用開始にあわせて統一試験の問題用紙が回収されるようになり、受験者が本試験の形式をまったく確認できなくなったことへの対応として掲載が始まりました。
つまりサンプル問題の目的は「出題形式と答案用紙の様式を示すこと」であって、模範解答つきの問題集を配ることではありません。本試験の採点基準や配点の内訳が非公表であることとも一貫しています。解答が付かないのは不親切に見えますが、公式が出題形式の見本として位置づけている以上、今後付く可能性も高くはないと考えておくのが現実的です。
「答え」を手に入れる3つのルート
公式に解答がない以上、答え合わせの手段は自分で用意することになります。方法は次の3つです。
- 資格スクールが無料公開している解答解説を使う — TACとネットスクールが、商工会議所のサンプル問題に対応した模範解答を無料で出しています。最も確実で、本記事の第4章で入手先を詳しく扱います。
- 自分で検算する — 第3問の決算問題は貸借が一致するかで自己採点がある程度できます。ただし第1問の仕訳や第2問の勘定記入は、正解を知らないまま合っているかどうかを判断できません。
- 解説記事や動画で論点ごとに確認する — 特定の設問だけ理解できないときに向いた方法です。セット全体の答え合わせには向きません。
費用をかけずに全問の答えを確認したいなら、実質的に1番一択です。順番としては、公式ページから問題と答案用紙をダウンロードし、時間を計って解き、そのあとで予備校の解答解説を開くのが最も無駄がありません。
5セットで本試験5回分に相当する
日商簿記3級のサンプル問題は、2026年7月時点でサンプル1からサンプル5までの5セットが公開されています。それぞれのセットは第1問・第2問(1)・第2問(2)・第3問で構成され、第1問はどのセットも仕訳15問です。これは本試験の大問構成とまったく同じで、1セットを通しで解けば本試験1回分の分量になります。
市販の予想問題集を1冊買っても収録は4〜6回分程度なので、この5セットは無料で手に入る演習素材としてはかなりの量です。しかも予想問題ではなく実際に出題された問題である以上、難易度と文章の言い回しは本番そのものです。解答が付かないという一点を除けば、簿記3級の受験者にとって最優先で解くべき素材だと言えます。
サンプル問題はどこにある?商工会議所の公式ページと入手手順
サンプル問題がどこにあるか分からないという声は多いのですが、配布元は1か所しかありません。日本商工会議所が運営する検定試験サイト(kentei.ne.jp)の「簿記 サンプル問題」ページです。検索結果には解説サイトや資格スクールのページが先に並ぶことが多く、公式ページにたどり着く前に他のサイトで満足してしまうケースがよくあります。まずは配布元を押さえてください。
公式ページまでの道順
商工会議所の検定試験サイトから3ステップで到達できます。
- 検定試験ホームページのトップから「簿記」の検定情報に入ります。
- メニューの中にある「サンプル問題」を開きます。2級と3級のサンプル問題が案内されています。
- 「3級 サンプル問題」を選ぶと、サンプル1からサンプル5までの一覧が表示されます。
ページ内は「サンプル1」「サンプル2」…というブロックに分かれ、それぞれの中に第1問・第2問(1)・第2問(2)・第3問の4行が並びます。各行に「問題」と「答案用紙」のリンクがあり、いずれもPDFです。会員登録もメールアドレスの入力も不要で、リンクをクリックすればそのまま開きます。
ダウンロードするファイルは全部で40本
1セットあたり4つの大問があり、それぞれに問題と答案用紙が用意されているので、1セットで8ファイル、5セットすべてで40ファイルになります。数が多いので、最初にフォルダを作って整理しておくと後で困りません。
| 単位 | ファイル数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 大問1つ | 2本 | 問題PDF+答案用紙PDF |
| サンプル1セット | 8本 | 第1問・第2問(1)・第2問(2)・第3問 × 2本 |
| 3級のサンプル全体 | 40本 | サンプル1〜5 × 8本 |
大問ごとにファイルが分かれているのは、本試験1回分をまとめた1冊のPDFではないということでもあります。通しで解きたいときは、同じサンプル番号の4つを自分で並べて印刷する必要があります。
スマホからダウンロードするときの注意
スマホでも公式ページは問題なく開けますが、PDFの表示には向き不向きがあります。第3問の決算整理前残高試算表や答案用紙は横に広い表なので、スマホの画面では文字が小さくなり、数字の桁を追うのが難しくなります。第1問の仕訳15問だけなら画面で読めますが、第2問と第3問はパソコンかタブレット、できれば印刷して取り組むほうが確実です。
ダウンロードしたPDFはそのまま端末に保存できるので、通信環境がない場所で解きたい人はあらかじめ落としておくとよいでしょう。
「サンプル問題」以外の名前で探しても見つからない
日本商工会議所がこの素材に付けている名称はあくまで「サンプル問題」です。過去問題集・例題・練習問題といった言葉で公式サイト内を探しても該当ページは出てきません。また、回号(第○回)を指定した問題の配布も行われていません。検索するときは「簿記 サンプル問題 商工会議所」のように、公式が使っている語で探すのが最短です。
なお、公式サイトには2級のサンプル問題も同じ形式で掲載されています。3級と2級で掲載時期や本数が異なるため、3級を探しているつもりで2級のページを開いていた、という取り違えにも注意してください。
全5セットの中身 — 掲載時期と出題テーマの一覧
5つのセットは同時に公開されたものではなく、1年に1セットずつ追加されてきました。中身も一律ではなく、特に第2問と第3問はセットごとに扱う論点が入れ替わっています。どのセットから解くかを決めるために、まず全体像を押さえてください。
掲載時期 — 5セットは毎年4月に1本ずつ増えている
サンプル1・2・3は2024年4月にまとめて掲載され、その後はサンプル4が2025年4月、サンプル5が2026年4月に追加されました。つまり新しいセットは年に1本のペースで増えています。すでに解いたことがある人でも、受験年度が変わったら公式ページを開き直すと未見のセットが1本増えている可能性があります。
掲載が新しいほど直近の出題傾向に近いので、時間が限られているなら番号の大きいサンプル5・4から手をつけるのが合理的です。
共通の構成 — 第1問は全セット仕訳15問
どのセットも大問の並びは同じで、次の4本で1セットです。
- 第1問
- 仕訳問題が15問。取引文ごとに6個前後の勘定科目が「ア.〜カ.」の形で示され、その記号を答案用紙に書き、あわせて金額を記入します。本試験の第1問は15問45点なので、問題数は本番と完全に同じです。
- 第2問(1)
- 勘定記入の問題。特定の勘定の空欄に、摘要(相手科目)の記号と金額を埋めていく形式です。
- 第2問(2)
- 補助簿・帳簿・用語などから1問。(1)とは別のテーマが組み合わされます。
- 第3問
- 決算の総合問題。決算整理事項をもとに、精算表・決算整理後残高試算表・財務諸表のいずれかを作成します。
第1問はどのセットも設問数・形式ともに変わりません。消費税を考慮する設問と考慮しない設問が混在し、指示された問題のみ処理するという注意書きも共通です。配点も本試験と同じで、第1問45点・第2問20点・第3問35点の100点満点、試験時間は60分です。つまり1セットを通しで解くことは、配点構成も時間配分も本試験1回分をそのまま再現することになります。仕訳のパターンそのものを固めたい人は、5セット分の第1問だけを続けて解くという使い方もできます。頻出パターンの整理は簿記3級の仕訳問題を完全攻略|よく出るパターン一覧・覚え方・無料練習法にまとめてあります。
セット別の出題テーマ一覧
第2問と第3問について、5セットで実際に何が問われているかを整理すると次のようになります。自分が苦手な論点を含むセットを狙って解くときの目安に使ってください。
| セット | 掲載 | 第2問(1) | 第2問(2) | 第3問 |
|---|---|---|---|---|
| サンプル1 | 2024年4月 | 剰余金の配当と損益勘定の記入 | 商品有高帳(移動平均法)と売上総利益 | 決算整理後残高試算表の作成 |
| サンプル2 | 2024年4月 | 固定資産台帳をもとにした備品・減価償却の勘定記入 | 取引がどの補助簿に記入されるかの判定 | 精算表の作成 |
| サンプル3 | 2024年4月 | 前払家賃など経過勘定の勘定記入 | 買掛金勘定と仕入先ごとの記録 | 貸借対照表・損益計算書の作成 |
| サンプル4 | 2025年4月 | 三分法による売上原価算定の勘定記入 | 用語を選ぶ空欄補充 | 貸借対照表・損益計算書の作成 |
| サンプル5 | 2026年4月 | 利息に関する勘定記入(開始記入を含む) | 固定資産台帳の読み取り | 貸借対照表・損益計算書の作成 |
表から読み取れることが2つあります。ひとつは第3問は財務諸表の作成が主流になってきていること。精算表はサンプル2の1本のみで、サンプル3以降は3セット続けて貸借対照表・損益計算書の作成です。もうひとつは第2問(1)が5セットとも勘定記入であることです。テーマは配当・固定資産・経過勘定・売上原価・利息とばらけていますが、問われている作業は一貫して「勘定の空欄を摘要と金額で埋める」ことでした。
第2問が読み取りにくいときは形式から入る
第2問は配点20点に対してテーマの幅が広く、初見では何を聞かれているのか掴みにくい大問です。とくにサンプル1の損益勘定やサンプル5の開始記入は、勘定の締切と繰越のルールを知らないと手が止まります。出題パターンを先に把握してからサンプルに当たると理解が早いので、簿記3級 第2問の対策完全ガイド|配点20点で何が出る?勘定記入・補助簿・伝票の解き方とコツで全体像を確認してから戻ってくることをおすすめします。
解答・解説はどこで手に入る?TACとネットスクールの無料解答解説
ここが本題です。日商簿記3級のサンプル問題の答えは、資格の学校TACとネットスクールの2社が、それぞれ無料で公開しています。どちらも商工会議所の公開している5セットに対応した模範解答を用意しており、費用はかかりません。公式が解答を出していない以上、この2社の解答解説が事実上の答え合わせ先になります。
ただし注意点があります。これらは各社が独自に作成したものであり、日本商工会議所が公認した公式解答ではありません。実際の本試験の採点基準や部分点の付き方まで再現しているわけではない、という前提で使ってください。とはいえ簿記3級の解答は一意に定まる問題がほとんどで、2社の解答が食い違うような論点はまず出てきません。
ネットスクール — 解答+動画解説を登録なしで見られる
ネットスクールは、商工会議所のサンプル問題に対する解答と動画解説をまとめた特設ページを公開しています。3級については登録もメールアドレスの入力も不要で、そのまま解答と解説動画を見られます。答えだけでなく「なぜその処理になるのか」を講師が話しているので、独学で解説がない状態を埋める用途に向いています。
使いどころは次のような場面です。
- 第2問の勘定記入で、どの摘要が入るのか自力で決められなかったとき
- 第3問の金額が合わず、どの決算整理でずれたのかを追いたいとき
- 解答は分かったが、処理の理屈に納得がいかないとき
なお2級のサンプル問題の解説はメールアドレスの登録が必要な扱いになっており、3級とは条件が異なります。3級だけを見るなら登録は不要です。
TAC — 5セット分の解答PDFをまとめて配布
資格の学校TACも、簿記3級のサンプル問題に対応した解答PDFを公開しています。特徴は5セット分の解答が1つのPDFにまとまっていることで、印刷して手元に置いておけば、解くたびにページを開き直す必要がありません。TACの解答PDFは更新が入ることがあり、サンプル5の追加にも対応しています。
TACのページには、サンプル問題の解答とは別に、講師が本試験レベルで作成した模擬問題とその解説も置かれています。こちらは名前とメールアドレスを登録するとネット模試1回分が使えるようになる仕組みで、サンプル5セットを解き切ったあとの追加演習として使えます。解答だけが欲しいなら登録は不要です。
2社の使い分け
どちらか一方で足りますが、性格が違うので目的に応じて選んでください。
| ネットスクール | TAC | |
|---|---|---|
| 形式 | 解答+動画解説 | 解答PDF(5セット分を1本に集約) |
| 3級の利用条件 | 登録不要・無料 | 解答PDFは登録不要・無料 |
| 向いている使い方 | 理屈から理解したい/独学で質問先がない | まず答え合わせだけ素早く済ませたい |
| 追加コンテンツ | 解説講義 | オリジナル模擬問題・ネット模試(登録制) |
効率がよいのは「TACの解答PDFで丸つけ → 間違えた設問だけネットスクールの動画で理由を確認」という併用です。全問の解説動画を最初から見ると時間がかかりすぎるので、動画は的を絞って使うほうが学習が進みます。
解答を見る前に必ずやっておくこと
解答解説が無料で手に入るぶん、解く前に答えを開いてしまう誘惑があります。これをやると、サンプル問題の最大の価値である「本番の文章を初見で読む経験」が失われます。最低限、次の2点は守ってください。
- 答案用紙を印刷するか手元に開いてから解き始める — 頭の中だけで仕訳を組み立てると、答案用紙の欄の使い方でつまずく本番のリスクが残ります。
- 分からない設問も飛ばさずに何か書く — 空欄のまま解答を見ると、自分がどこまで分かっていたのかが記録に残りません。
また、答え合わせのときに正誤だけを見て終わらせないことも大切です。間違えた設問は「知識がなかったのか」「読み違えたのか」「計算ミスか」の3つに分類してください。知識不足なら該当論点のテキストに戻る、読み違えなら問題文の条件に線を引く習慣をつける、計算ミスなら仕訳の反復で速度と正確さを上げる、と打ち手が変わります。この切り分けをするだけで、5セットしかないサンプル問題から引き出せる情報量が大きく変わります。
ネット試験形式で解く — 紙のPDFと本番CBTのギャップを埋める
いま簿記3級の受験者の多くはネット試験(CBT)で受けます。ところが商工会議所のサンプル問題は紙の答案用紙を前提としたPDFで配布されており、ネット試験の画面をそのまま再現したものではありません。サンプル問題で満点が取れても、本番の画面で操作に手間取って時間が足りなくなる、というずれが起こり得ます。このギャップを事前に埋めておいてください。
PDFと本番画面で違うところ
問題文と出題内容は同じです。違うのは解答の入力方法と、画面上での情報の見え方です。
| 項目 | サンプル問題(PDF) | ネット試験の本番画面 |
|---|---|---|
| 勘定科目の解答 | ア〜カの記号を手書きする | プルダウンから科目名を選択する |
| 金額の解答 | 枠に手書きする | キーボードで数値を入力する |
| 大問の切り替え | 紙をめくる(全体を見渡せる) | 画面上のボタンで移動する |
| 計算・下書き | 問題用紙の余白に書ける | 配布された下書き用紙に書く |
| 見直し | いつでも全問を一覧できる | 大問を行き来する操作が必要 |
いちばん影響が大きいのはプルダウン選択です。紙では「ア」と書けば済むところを、本番では科目名の一覧から目的の科目を探して選びます。科目名をあいまいにしか覚えていないと、この一覧の中で迷って時間を失います。記号で解答している限りこの弱点は表面化しないので、サンプル問題だけで対策を終えるのは危険です。
サンプル問題をネット試験向けに使う手順
紙の素材を本番仕様に近づけるには、解く順番を工夫します。
- まずPDFを印刷して紙で解く — 解き方の型を作る段階です。答案用紙の様式を目に焼きつけることが目的なので、時間は気にしなくて構いません。
- 2周目は時間を計って解く — 本試験は大問3つで60分です。第1問20分・第2問10分・第3問25分・見直し5分あたりが目安の配分になります。
- 仕上げは画面で解く演習に切り替える — CBT形式の模試や仕訳ドリルで、プルダウン選択と数値入力の操作に慣れておきます。
この3段階を踏むと、サンプル問題の「本番の問題そのもの」という強みと、CBT形式の演習の「本番の操作」という強みを両方取れます。
ネット試験当日の流れや会場での注意点そのものが不安な人は、簿記3級ネット試験とは?日程・申し込み・会場・当日の流れ・過去問がない試験の対策まで完全ガイドで全体像を先に押さえておくと安心です。
ネット試験は受験者ごとに問題が違う
もうひとつ知っておくべき前提があります。ネット試験は受験者ごとに異なる問題が出題されます。同じ日に同じ会場で受けた人と、まったく同じ問題を解くわけではありません。したがってサンプル問題と同じ問題が本番で出ることを期待した暗記は意味がありません。覚えるべきは答えではなく、その処理の考え方です。
逆に言えば、出題される論点の範囲は決まっています。サンプル5セットで扱われている論点は本試験で繰り返し問われるものばかりなので、テーマとして押さえておく価値は高いままです。
統一試験(ペーパー)で受けるなら紙のまま使い切る
統一試験で受験する予定なら、話は単純です。サンプル問題のPDFは統一試験とほぼ同じ体裁なので、印刷して解く演習がそのまま本番の練習になります。答案用紙の枠の大きさや数字を書き込むスペースの感覚も含めて、本番に近い状態を再現できるのは統一試験の受験者だけの利点です。この場合はCBT形式の模試に切り替える必要はなく、5セットを繰り返し解くほうが効果的です。
答案用紙のダウンロードと印刷 — 公式PDFと市販教材の解答用紙
サンプル問題を紙で解くなら、答案用紙をどう用意するかが実務的な問題になります。公式の答案用紙PDFは1回解けば書き込みで埋まってしまうため、2周目以降は印刷し直すことになります。ここでは印刷の設定と、市販教材の解答用紙をあわせて使う方法を整理します。
公式の答案用紙PDFを印刷するときの設定
答案用紙は表組みが細かいので、印刷設定を間違えると本番と感覚が変わります。次の3点を確認してください。
- 用紙サイズはA4
- PDFはA4を想定した作りです。B5に縮小すると罫線の間隔が狭くなり、数字を書き込みにくくなります。
- 倍率は「実際のサイズ」
- 「ページに合わせる」を選ぶと余白の分だけ縮小されます。本番の答案用紙とサイズをそろえたいなら等倍で出してください。
- 片面印刷
- 第3問の答案用紙は縦に長い表です。両面にすると解答中に裏返す手間が発生し、集計の途中で見比べられなくなります。
枚数が気になる場合は、割り切り方を決めておくと無駄がありません。通しで解く分だけ印刷し、大問別に部分演習するときは画面で問題を読んで手元のノートに解くという使い分けで、印刷量は半分以下に抑えられます。第1問の仕訳15問は、答案用紙を印刷しなくてもノートに「借方科目・金額/貸方科目・金額」を書けば十分に練習になります。
コンビニ印刷を使う場合
自宅にプリンタがない人は、コンビニのマルチコピー機でPDFを印刷できます。スマホのアプリやUSBメモリからファイルを送る方式で、白黒1枚10円前後が相場です。サンプル1セット分(問題と答案用紙で8ファイル、十数枚)を印刷しても数百円で収まります。5セット全部を最初から印刷するより、直近に解く1セットずつ印刷するほうが費用も管理も楽です。
市販教材の解答用紙ダウンロードも使える
サンプル問題の答案用紙とは別に、市販の問題集にも解答用紙のダウンロードサービスが付いていることがあります。TAC出版の「よくわかる簿記シリーズ」(合格テキスト・合格トレーニング・本試験問題集など)が代表例で、書籍購入者向けに解答用紙のPDFを配布しており、何度でも印刷して繰り返し解けるようになっています。
この仕組みが役に立つのは次のような場面です。
- 問題集に直接書き込んでしまい、2周目に解けなくなったとき
- 精算表や財務諸表のように、同じ様式で何度も練習したい論点があるとき
- 家族や友人と同じ教材を共有していて、書き込めないとき
ただしこれらは書籍の付帯サービスであって、商工会議所のサンプル問題の答案用紙とは別物です。サンプル問題を解くための用紙は、公式ページからダウンロードしたPDFを使ってください。様式が本番と一致しているのは公式の答案用紙だけです。
用紙を再利用する裏技は避ける
印刷代を惜しんで、答案用紙をコピーして使い回したり、鉛筆で書いて消しゴムで消して再利用したりする人がいます。前者は問題ありませんが、後者は過去に自分が書いた答えの跡が残り、2周目が実質的に答えを見ながらの演習になるため避けてください。同じセットを繰り返し解く価値は「前回と同じところで間違えるかどうか」を測れる点にあります。跡が残っていると、その測定ができません。
サンプル問題は過去問なのか — 「過去問がない」との関係
簿記3級を調べていると「過去問は公開されていない」という説明と「サンプル問題は実際に出題された問題」という説明の両方に出会い、矛盾しているように見えます。結論から言うとどちらも正しく、サンプル問題は過去問の一部が公式に公開されたものです。ここを正確に理解しておくと、素材の探し方で迷わなくなります。
「過去問がない」の正確な意味
簿記3級で過去問が手に入らないと言われるのは、次の2つの事情によるものです。
- 統一試験の問題用紙は試験後に回収され、持ち帰れない — 受験者が問題を持ち出せないため、本試験の全問がそのまま流通することがありません。
- ネット試験は受験者ごとに問題が異なる — 「第○回の問題」という固定のセットがそもそも成立しません。回号を指定して探しても該当するものは存在しないことになります。
つまり存在しないのは「本試験1回分をまるごと収録した、回号つきの過去問題集」です。市販の問題集が「過去問題集」ではなく「予想問題集」「本試験問題集」といった名前になっているのはこのためです。この事情の詳細は日商簿記3級の過去問はない?無料ダウンロード素材と「過去問の代わり」になる問題集の選び方で扱っています。
サンプル問題は「回号のない過去問」
一方でサンプル問題は、商工会議所自身が「2021年度以降に出題された問題の一部」として公開しているものです。予備校が傾向を分析して作った予想問題とは性質が違い、出題者本人が作った本物の試験問題です。ただし何年度の何回の試験で出たかは示されておらず、単に「サンプル1」から「サンプル5」という通し番号が振られているだけです。
この違いを整理すると次のようになります。
| 一般的な意味での過去問 | サンプル問題 | 予想問題 | |
|---|---|---|---|
| 作成者 | 試験実施団体 | 試験実施団体 | 資格スクール等 |
| 実際に出題されたか | された | された | されていない |
| 回号・年度の特定 | できる | できない | 該当なし |
| 公式の解答 | —(そもそも入手不可) | 付かない | 付く |
| 入手できるか | できない | 公式サイトで無料 | 市販・一部無料 |
表のとおり、サンプル問題は「入手できる唯一の本物」という位置づけです。予想問題がどれだけ精巧でも、出題者自身が書いた文章の言い回しと答案用紙の様式を確認できるのはサンプル問題だけなので、優先順位は最上位に置いてください。
「過去問」を名乗る無料PDFには近づかない
検索すると、本試験の過去問を名乗る無料PDFが見つかることがあります。しかし前述のとおり本試験の問題は回収されており、正規に流通する経路がありません。出回っているものは市販問題集のスキャンや受験者による復元である可能性が高く、権利者に無断でアップロードされたファイルは著作権を侵害します。
あわせて、公式のサンプル問題そのものにも著作権があります。サンプル問題と答案用紙の著作権は日本商工会議所に帰属し、無断転載と無断営利利用は禁止されています。自分の学習のために公式サイトからダウンロードして解く範囲にとどめ、SNSやブログに問題文をそのまま載せるといった使い方はしないでください。無料の素材だけで学習を組み立てる方法は簿記3級の過去問を無料で解く方法|公式サンプル問題・無料模試・0円学習プランの全手順にまとめています。
5セットを解き終えたら — 予想問題・予想問題集で演習量を足す
サンプル問題は質が高い一方で、量は5セットしかありません。本試験形式の通し演習は直前期に3〜5回分を繰り返すのが目安なので、5セットを1周しただけでは足りない人が多くなります。しかも一度解いた問題は答えを覚えてしまうため、2周目の得点は実力を反映しません。ここからは予想問題で演習量を積み増す段階に移ります。
無料でダウンロードできる予想問題
費用をかけずに追加の演習を集めるなら、次の順で当たると効率的です。
- 資格スクールの無料模試プログラム
- ネットスクールがCBT形式の模擬試験を3回分、CPAラーニングが無料会員登録で模擬試験を6回分、それぞれ解答解説つきで公開しています。ブラウザ上で解くタイプなので、ネット試験の操作練習を兼ねられるのが強みです。
- TACのオリジナル模擬問題
- サンプル問題の解答PDFと同じページに、講師が本試験レベルで作成した模擬問題が置かれています。登録するとネット模試1回分も利用できます。
- 学習サイトの無料予想模試
- いぬぼきなどの学習サイトが、PDFで予想模試を無料配布しています。ダウンロードして印刷すれば統一試験形式の練習に使えます。
この3系統を合わせると、無料のまま10回分前後の通し演習が確保できます。直前期に必要な回数は十分に超えるので、演習量が足りないという理由で有料教材を買う必要はありません。各サービスの中身や難易度の比較は簿記3級の模擬試験はどこで受けられる?無料でネット試験形式を解けるサイト・プログラム比較で詳しく扱っています。
市販の予想問題集を1冊買う判断
無料で足りるとはいえ、市販の予想問題集を1冊足す価値がある人もいます。目安は次のとおりです。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 無料模試で70点を安定して超えている | 買わなくてよい。仕訳の反復に時間を回す |
| 60点台をうろうろしている | 1冊買う価値がある。解説の詳しさで選ぶ |
| 第3問だけ大きく落とす | 買うより論点別の演習に戻るほうが早い |
| 紙で通し演習を数多くこなしたい | 1冊買う。印刷の手間と費用が逆転する |
価格は1,500円前後が相場で、収録は4〜6回分が一般的です。選ぶときに見るべきは収録回数ではなく解説で集計の過程まで追えるかどうかです。第3問は答えの金額だけ示されても、どの決算整理でずれたのかが分からなければ復習になりません。書店で第3問の解説を1問ぶんだけ読み比べれば違いはすぐ分かります。
年度の古い予想問題は使わない
無料でダウンロードできる予想問題には、作成時期が書かれていないものが混ざります。簿記3級は2021年度に試験形式が大きく変わり、それ以前は5問構成・120分でしたが、現在は大問3つ・60分です。見分け方は単純で、「第1問〜第5問」と書かれた素材は旧形式なので使わないと決めておけば事故は防げます。試験時間が120分と書かれているものも同様です。
出題区分表の改定で範囲が変わることもあるため、無料の予想問題はできるだけ新しいものを選んでください。この点、公式のサンプル問題は現行形式であることが確実なので、素材の鮮度を心配せずに使えるという意味でも安全です。
演習量より効くのは第1問の精度
通し演習を増やすことに気を取られがちですが、得点への影響がいちばん大きいのは第1問です。配点は第1問45点・第2問20点・第3問35点で、合格ラインは100点満点中70点。第1問で40点前後を確保できれば、第2問と第3問は合わせて30点で合格に届きます。逆に第1問が25点だと、残りの55点分から45点を積む必要があり、一気に難しくなります。
第1問は仕訳15問なので、対策は仕訳の反復に尽きます。しかも第2問の勘定記入も第3問の決算整理も、分解すれば仕訳の集合です。通し演習は時間と体力を使うわりに1回で得られる経験が少ないので、通し演習は週に1〜2回、仕訳は毎日という配分にすると、限られた時間で伸びやすくなります。
まとめ — 問題は公式から、解答は予備校から
日商簿記3級のサンプル問題と解答について、この記事で確認したことを整理します。
- 公式に解答は付かない — 日本商工会議所が配布しているのは問題PDFと答案用紙PDFの2点だけで、模範解答は含まれません。
- 答えはTACとネットスクールが無料公開している — TACは5セット分をまとめた解答PDF、ネットスクールは3級について登録不要で解答と動画解説を出しています。ただし公認の公式解答ではない点は理解して使ってください。
- 入手先は商工会議所の検定試験サイト1か所 — 「簿記 サンプル問題」のページから、3級のサンプル1〜5をたどります。登録も費用も不要です。
- 全5セット、掲載は2024年4月に3本・2025年4月と2026年4月に各1本 — 各セットは第1問(仕訳15問)・第2問(1)・第2問(2)・第3問で構成され、1セットが本試験1回分に相当します。
- サンプル問題は回号のない過去問 — 2021年度以降に実際に出題された問題の一部で、予想問題とは性質が違います。入手できる唯一の本物なので優先度は最上位です。
- ネット試験で受けるならCBT形式の演習を足す — PDFは記号を書く形式ですが、本番は科目をプルダウンで選び金額を入力します。紙で型を作り、仕上げは画面で解くのが確実です。
探し方さえ分かってしまえば、サンプル問題は10分あれば手元に揃います。時間をかけるべきなのは素材集めではなく、解いたあとの復習です。5セットしかないぶん、1セットから引き出せるものを最大化してください。間違えた設問を「知識不足・読み違え・計算ミス」に分類する作業だけでも、次に何をすべきかがはっきりします。
そして、サンプル問題を解いて第1問で落とした設問があったなら、そこがいちばん伸びしろのある場所です。第1問の45点は限られたパターンを正確に処理できるかどうかで決まり、第2問の勘定記入や第3問の決算整理にもそのまま効いてきます。当アプリの仕訳ドリルは、本番のネット試験と同じ勘定科目を選んで金額を入力する形式で出題し、間違えた問題は復習キューに自動で積まれて忘れる前に戻ってきます。サンプル問題で見つけた弱点を、そのまま毎日の演習につなげてみてください。
